チンパンジー

ページ番号1001545  更新日 2023年7月3日

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霊長(れいちょう)目 オランウータン科

写真:チンパンジー

特徴

個体情報

個体名 テツ ユウコ ゆみのすけ リリー ゆづる つむぎ
性別 オス メス オス メス オス メス
出生日 1973年産? 1973年7月9日 1974年以前 1991年5月21日 2015年8月13日 2020年2月8日
出生場所 不明 谷津遊園 シェラレオーネ 名古屋市東山動植物園 釧路市動物園 釧路市動物園
来園日 1984年7月3日 1983年5月10日 2014年3月17日 1999年3月29日 - -
前の飼育施設 伊豆シャボテン公園 谷津遊園 秋田市大森山動物園 名古屋市東山動植物園    
不明 父石松×母アンドロ 野生 父チャーリー×母マリー 父ゆみのすけ×母リリー 父ゆみのすけ×母リリー
備考  

2023年7月1日に亡くなりました

       

一般情報

分類

霊長目
ヒト科
学名(種名)
Pan troglodytes(亜種名 P.t.verus)
英名
Chimpanzee(亜種英名 Western Chimpanzee)
レッドリスト
絶滅危惧種I類(IUCN)

形態

頭胴長
オス 77~92cm メス 70~85cm(含、全亜種)
体重
オス 平均48.9kg(34~70kg)メス 平均 40.6kg(26~50kg)
参考:飼育下最大値 オス 80kg、メス 68kg(含、全亜種)
外毛特徴
多くの個体は黒い。20歳を超えると背中が灰色になるものが多い。赤ん坊(乳幼児)の尻には白い毛の房があるが、性的に成熟に達する前になくなる。手と足の皮膚は黒く、顔の皮膚はピンク、茶褐色、黒など個体によって異なるが、普通年齢が増すにつれて黒みを増す。

分布

ザイール以北、セネガルからタンザニアに至るアフリカ西部から中央部
(ニシチンパンジーは、セネガル南部からナイジェル川の東まで:最大の個体群はコートジボアールとギニアに見られる。他に、リベリア、シエラレオネ、ギニアビサウにも生息する。ガーナ、セネガル、マリは少数生息)。

生物学的特性

生息環境
樹冠が連なった湿潤な森林のほか、川縁の一部しか常緑樹がない平坦なサバンナの乾燥地域にも生息(ただし、果実をつける常緑樹の存在は重要)
食性
  • 雑食性(主として果実食であるが、草、昆虫、肉なども食べる)
  • 主要餌:熟れた果実(一日当たり4時間は果実を食べるのに費やす:歯は果実食に適した形をしている)。
  • 1日の1~2時間を若葉を食べることに費やすが、特に午後遅くに食べることが多い。
  • 果実が不足する乾季には、樹木の種子で埋め合わせるほか、花、柔らかい植物の随、虫こぶ、樹脂、樹皮も食べる。
  • 動物性も食べるが、時間にして全体の5パーセント程度で、ハチやアリが最も多い。
  • 哺乳類も地域によってはよく餌となっており、サル、ヤブイノシシ、アンテロープなどが主な獲物で、それらの子どもを捕らえることが多い。餌として30種以上の哺乳類の記録があるが、主にアカコロブスのようなサル類食べている。
  • 幾千もの実のなる樹木や、蟻塚などの好みの餌場を記憶する能力に長けている。
遊動域・行動圏
  1. 小規模な移動を繰り返している集団:10~15平方キロメートル。各メンバーはそれぞれ2~4平方キロメートルのコアエリアを有する。森林に棲むチンパンジーの行動圏=平均12平方キロメートル(5~50平方キロメートル)
  2. 季節的な移動を行う集団:200~400平方キロメートル以上の中で、食物の豊富なところに2~3週間ずつ留まりながら、移動する。サバンナに棲むチンパンジーの行動圏=120~560平方キロメートル
  3. 行動圏は、オスにより排他的に守られる。オスは行動圏境界を巡回するが、隣の集団メンバーに出くわすと、攻撃し、殺すこともある。
繁殖
  • 繁殖期:決まっていない
  • 性的活動時期:出産後3~4年後の再開後から次の妊娠までの1~6ヶ月
  • 出産間隔(出産から次の出産):平均4.6~7.2年(コドモが生きている場合)
  • 最初の出産は一般に、13-14歳(野生下で11~23歳,早いもので9.5歳:飼育下では平均10.5~11.14歳で、7.5歳での出産も知られている)。
  • 妊娠期間=196~260日間(平均230日間)
  • 産仔数:1(双子はまれ)(出生時体重約2kg)
  • 推定寿命からは、メスは一生涯に9頭の子を残せるはずだが、乳幼児期には平均30%しか生き残れない。
  • 離乳は3歳ころ(2年目以降)から始まり、5~7歳までに離乳する(ふつうは4年目)。
  • 月経周期(性周期、発情周期)=約36日間、
  • 発情した雌の会陰部の皮膚、いわゆる性皮は大きく膨らみ、ピンク色を呈し、この状態が10-12日続く
  • 発情期の1週間くらいはどの雄とも乱交的に、1日平均6回ほど交尾する。
  • 発情の最終週になって排卵期が近づくと、
    1. 高順位のオスが劣位のオスを威嚇したり攻撃して追い払い、独占的にメスと交尾しようとするか、
    2. オスとメスが連れ合い関係を結び、集団の仲間から数日から数週間離れて、ペアで過ごす。
  • 交尾の75パーセントは乱交的であるが、妊娠に結びつくのはほとんどが連れ合い関係時の交尾らしい
性成熟
  • 飼育メス:初潮はおよそ8歳、初産=10~11歳(野生ではこれより3~4年遅れる)
  • オス:2歳ころまでにオトナのメスと交尾開始。求愛行動は3~4歳から。最初の射精は9歳ころであるが、体のサイズがオトナになり、社会的にも成熟するのはおよそ15歳。
寿命
不明:40~60歳
行動・生態など
  • 発育段階の分類:
    1. 乳幼児=5歳まで、
    2. コドモ=5~7歳、
    3. 青年=7~10歳(メス)、10~12歳(オス)、
    4. オトナ間近の青年=10~13歳(メス)、12~15歳
    5. オトナ=14歳以上(メス)、16歳以上(オス)
  • 一日の生活パターン(野生):地域によって異なるが、日中の43-55%は採餌、12-14%は移動、残り25-39%は休息に費やす。
  • 早朝(午前7時~9時)の2時間以上を集中的に採餌に費やし、日中は食べたり、休んだり、あるいはあたりをぶらつき、午後遅く(午後3時30分~7時30分)に、寝床を作る前に再び集中的に食べる。全体として、一日の6~8時間は採餌活動に費やす。
  • 毎晩、新しい木の葉のベッドを作って、その上で眠る。オトナは皆一人で寝るが、赤ん坊は次の子が生まれるまで母親と一緒に寝る。
  • ベッドは樹木の地上4~50mの高さのところに作られるが、10~20mが多い。
  • 音声は13種類知られている
  • 陸上移動はふつうナックル歩行。短い距離であれば2足歩行できる。
  • 樹上では、腕渡りによる移動が普通。
  • 雄は、自分が所属する集団を離脱することはまずない。12~16歳までに階級社会組織に取り込まれる。
  • メスは、思春期に達すると別の集団に移籍する(生涯に1回だけの移籍する例が多い)。
  • 移籍したメスははじめの数ヶ月をオスといっしょに過ごしして、敵対的なメスから身を守る。
  • オスはメスに対して優勢で、メスよりも社会的である。
  • 天敵:ヒト(食料として密猟されるほか、密売用に子を捕らえるため親が殺されている)、
  • 可能性のある天敵(証拠はない):レオパード、パイソン(ヘビ類)、マーシャルイヌワシ
  • 子殺しの例がある(ウンチクを参照)。
  • 様々な道具を使うことが知られている

個体数

  1. 総数は不明:
    2003年推定数
    • ニシチンパンジーの推定数は21,300~55,600頭
    • ナイジェリアチンパンジーの推定数は3500~9000頭、
    • ヒガシチンパンジーの推定数は20万~25万頭。
    • チュウオウチンパンジーの推定数は7万~11万6500頭。
  2. 現在、全分布域でチンパンジーの数が激減しており、象牙海岸沿いでは1990年から2007年の間に90%のチンパンジーが消失した。

ちょっとウンチク

  1. 4亜種。ただし、区分する外部形態的特徴が乏しい。DNAの解析では異なっている。
    • Pan troglodytes troglodytes(チュウオウチンパンジー)、
    • P. t. ellioti(ナイジェリアチンパンジー),
    • P. t. schweinfurthii(ヒガシチンパンジー)、
    • P. t. verus(ニシチンパンジー)
  2. 近縁種にボノボ(英名 Bonobo)がいる Pan paniscus
  3. 頭蓋容量=320~480cc(ヒト=1400~1500cc)
  4. オスは若い個体、特に尻がまだ白い毛であるコドモに対しては優しくよく遊ぶが、直接子の世話をすることはない
  5. 薬草:チンパンジーが食べる薬草は8科13属が記録されている。現地のヒトも薬として使っている。薬草から分離された化合物は駆虫剤、制がん剤、抗生剤などの効力がある。病気の個体は様々な薬草を食べるのことが知られている。
  6. 母親と子の関係は一生涯、影響を与えており、メスの社会的順位が子に影響を与える。他のチンパンジーを恐れる神経質な母親の子は、順位競争では上位にはなれないようだ。
  7. カニバリズム(共食い)は、同じコミュニティー(共同体)ではふつうはない。しかし、コミュニティー間での闘争時に乳幼児が殺され食べられている。なお、メスとその娘が同じコミュニティのメスの子を殺して食べたということがあったが、メスが死亡すると娘は共食いをしなくなった。
  8. 食糞は、飼育下で見られることはあるが、野生では見られない。

参考文献

  1. D.W. マクドナルド編(伊谷純一郎監修) 1986 動物大百科.第3巻 霊長類.平凡社
  2. Jones, Clyde, Cheri A. Jones, J. Knox Jones, Jr. and Don E. Wilson 1996 Pan troglodytes. Mammalian Species (529):1-9
  3. Russell A. Mittermeier, Anthony B. Rylands, Don E. Wilson(eds) 2013 Handbook of the Mammals of the World - Volume 3. Primates. Lynx Editions. Barchelona
  4. Shefferly, N. 2005  “Pan troglodytes”. (On-line), Animal Diversity Web.
    http://animaldiversity.org/acounts/Pan_troglodytes.
  5. フランス・ドゥヴァール2006
    チンパンジーの政治学―猿の権力と性.西田利貞(翻訳),産経新聞社
  6. J・グドール(田中正之・松沢哲郎訳) 1992 チンパンジーの行動目録.霊長類研究8:123-152

解説記事

  • IUCNレッドリスト 絶滅危惧1B類(EN)
    絶滅危惧1A類(CR)ほどではないが近い将来における絶滅の危険性が高い種
  • ワシントン条約 附属書1
    絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けているか又は受けるおそれのあるもの

 

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