野生動物の保護について
野生動物の保護
釧路市動物園では1975年の開園当初より野生動物の保護に取り組んでおります。2000年初頭までは毎年50~100点の野生動物が持ち込まれていましたが、この20年程は毎年20~50点ほどで推移しています。残念ながら死亡率は高く、生体で収容された約45%が亡くなり、野生に戻れたのは哺乳類で2割程度、鳥類では3割程度でした。野生復帰できないと判断された個体は、飼育を継続し、展示したり、繁殖したりできるような環境を整えます。
保護動物のうち哺乳類は18%程度で、残りは鳥類です。
哺乳類ではアザラシが、鳥類ではタンチョウや水辺の鳥が保護される割合が多く、シマフクロウ、オジロワシ、オオワシ、クマタカなどの大型猛禽類は、現在では、環境省が直接保護収容していますが、野生復帰できない個体については、生息域外保全を目的に移管されてくることもあります。これらの飼育・繁殖技術を高め、野生復帰や野生導入も視野に入れながら道東の生物多様性の保全に貢献していきたいと考えています。
アザラシの保護
保護される哺乳類のうち3分の1はアザラシ類で占められます。ほぼ毎年数頭保護され、多い年には12頭保護されたこともあります。しかし、2015~2023年でアザラシが保護されたのは、2019年のゴマフアザラシ1頭のみであり、年々保護件数が減っている傾向が見られます。2015年より北海道が「北海道アザラシ管理計画」として、捕獲と追い払い等を実施していることとの関連性が懸念されます。
北海道近海では5種のアザラシが見られ、このうちアゴヒゲアザラシを除く4種が収容されています。多い順にゴマフアザラシ(49.6%)、ワモンアザラシ(21.4%)、クラカケアザラシ(18.3%)、ゼニガタアザラシ(10.7%)となっています。
季節的には4月から5月にかけて、親からはぐれた幼獣で保護される場合がほとんどで、生まれた時の体重が20kgくらいあるのに対し、保護されるときには10kgを下回る場合も多く、生存率は4割くらいです。その他に船のスクリューと接触してケガをして、保護されるケースもあります。
希少鳥類の増殖
これまでにもシマフクロウやオジロワシ、オオワシ、クマタカなどが保護され、野生復帰できない個体や環境省から移管された個体を活用し、生息域外保全を目的として飼育しています。当園では、これまでにシマフクロウ、クマタカ、オジロワシ、オオワシでの繁殖実績を持ち、特にシマフクロウ、クマタカの増殖には力を注いでいます。しかし、オスとメスの相性が合わないと繁殖しない場合があったり、また野生個体が飼育下という環境に慣れるのに時間がかかったりするため、一部の個体では一般公開せず静かな環境で繁殖を図っています。この2種では自然繁殖および人工孵化、育雛の世界初成功という快挙を成し遂げています。
人工孵卵・孵化
希少種では数をふやすことが優先されますので、破卵の危険性を減らすために、卵を一時的に取り上げて孵卵器で温め、親には擬卵を抱かせることがあります。また、基本的には親による繁殖を行っていますが、親が抱卵をやめてしまった場合には、人工孵化を行ってヒナを育てることもあります。こうした技術を磨き、継承して行くことが、希少種の保護にとって重要であり、これまでにタンチョウやシマフクロウなどのフクロウ類、クマタカなどのタカ類、オオハクチョウを始めとするガンカモ類、アカコンゴウインコ、ダチョウなど多くの鳥類で実績をもっています。
このページに関するお問い合わせ
生涯学習部 動物園 管理飼育展示担当
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