【博物館友の会】春採湖畔植物フェノロジー調査<2009年10月>
釧路市立博物館友の会会員による“春採湖畔らしさを探すための”春採湖畔植物フェノロジー調査
【その22】2009年10月7日(水曜日)
マユミ(ニシキギ科)の実が真っ赤です。
春採湖畔のいたるところで、今マユミの実が真っ赤になっています。今年は特に美しく色づいているようです。果実は倒三角形で4稜がありますが、裂けても翼状にはなりません。この木の枝に穴を開けボルトを差し込むと…、そうですバードコールになります。
こちらはオオツリバナ(ニシキギ科)の実です
こちらの果実は、5つの翼状に裂けて種が先にぶら下がります。春採湖畔にはこのほかヒロハツリバナとツリバナがあり、東屋「楼花亭」から湖畔遊歩道に下りていく道の途中にこの3種類が揃っています。私達はツリバナ三兄弟と呼んでいます。
平成の花咲爺さんです。
これはコウゾリナ(キク科)の花ですが、良く見てください。親の茎は既に枯れています。そこにしがみ付くように一輪だけ花が付いているのです。思わず「花咲爺さん」と呼んでしまいました。この生命力に元気を貰いました。
ここからは、来春に向けた植物の生活の一部をご紹介しましょう。
フデリンドウ(リンドウ科)の芽吹きです。
この場所は、今年の2月はじめに雪の下から芽を出しているのを発見し、いつ芽吹いたのか謎でした。なんとこの時期に芽吹いたのを発見しました。でも、他の場所ではほとんど4月のはじめに芽吹きますので、この個体だけ気が早いのかもしれません。ちゃんと花は咲きましたよ。
メマツヨイグサ(アカバナ科)のロゼット葉です。
メマツヨイグサはこの状態で冬を越します。葉が折り重なって、アクセサリーのロゼットに似ていることからロゼット葉といわれるようです。
オオダイコンソウ(バラ科)の冬芽です。
このほか、ダイコンソウ・カラフトダイコンソウなども冬芽を出しています。これらの芽は落ち葉などの下でジッと春の来るのを待っています。私達は観察をした後、そっと元の落ち葉をかけて戻しておきます。
オドリコソウ(シソ科)も冬芽を出しました。
オドリコソウは霜に打たれて葉がシワシワになりながらも、厳しい冬の去るのをジッとまっています。春暖かくなると一斉にニョキニョキと伸びてきますので「良く頑張ったね!」と思わず声をかけてしまいますよ。
秘密の公開です。ミヤマニガウリ(ウリ科)の種をごらん下さい。
8月26日のホームページ(その18)でご紹介したミヤマニガウリの秘密の公開です。緑色の果実の中に黒いカメムシそっくりの種が入っているのです。
こちらは本物のカメムシです。
上の種と見比べてください。手足があるなしの他はそっくりでしょう。おまけにミヤマニガウリの葉の上に止っているのですよ。この両者には共生関係があるのかも…??
春採湖畔の花たちは終わりに向かっていますが、足元を良く見ると今回ご紹介したような来春を待つ草花たちが必死に越冬の準備をしています。今回は冬を越す芽吹きをご紹介しましたが、一旦枯れてしまうセリ科の芽もたくさん出ていました。次回にご紹介します。
次回の観察は10月16日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その23】2009年10月16日(金曜日)
前回は冬を越す植物の芽吹きをご紹介しましたが、今回は来春の準備のために今新しい芽を出した植物の中から、セリ科の4種類をご紹介します。これらセリ科の秋の芽は2月3月の観察では確認されておりません。一旦枯れるものと思われます。
オオハナウド(セリ科)の秋の芽です。
花は6月9日のホームページでご紹介しました。夏の撮影中に「山菜のウドと同じか?」と聞かれたことがあります。こうして見ると山菜のウド(ウコギ科)との違いが判ると思います。
こちらはシャク(セリ科)です。
こちらも花は6月9日のホームページでご紹介しました。花は小さいのですが春採湖畔では多数派で、満開の時期は遊歩道脇が真っ白く見えるほど咲きます。
マルバトウキ(セリ科)も芽吹いていました。
こちらの花は7月17日のホームページで、私が「癒される」とのコメントをつけてご紹介しました。次に良く似たエゾノシシウドの秋の芽を載せますので、マルバトウキと良く見比べ、違いを見つけてください。
エゾノシシウド(セリ科)の秋芽です。
こちらの花はご紹介漏れでしたので、次に花を掲載します。こうして見比べるとマルバトウキとの違いがはっきり判るのですが、自然界では都合よく並んでは生えてはいません。
これがエゾノシシウド(セリ科)の花です。
撮影日は6月27日です。場所も上の秋の芽と同じ場所です。これらセリ科の秋の芽は一旦枯れるようですが、私達はどのようにして冬を越すのか観察を続けることにします。
前回ご紹介したオオツリバナ(ニシキギ科)の解説を一部修正します。
前回は果実が5つの翼状に裂けて種がぶら下がると解説しましたが、オオツリバナは、ときに4つに裂けるものがまじることが判りました。写真の一番左端が4つに裂けたものです。お詫びして訂正します。
こちらはツリバナ(ニシキギ科)です。
オオツリバナと良く似ていますが、こちらの果実は全て5つに裂けて種がぶら下がります。
また、オオツリバナの果実には狭い翼があるのに対し、こちらの果実は球形で翼がありません。花びらは5枚でやや紫がかった淡緑色なことで、他のツリバナ類と区別できます。
ヒロハツリバナ(ニシキギ科)の果実です。
こちらの果実には横にいちじるしく張りだした4つの翼があり、ツリバナ・オオツリバナと大きな違いがあります。また、花びらは淡緑黄色で4枚あることで、他のツリバナ類と区別します。撮影日は9月19日です。
なんと、今時オドリコソウ(シソ科)が咲いていました。
日当たりの良い場所ではありましたが、この一固体だけ咲いていました。前回、枯れた親茎にしがみ付いて咲くコウゾリナを、平成の花咲爺さんとご紹介しました。何か私が花咲爺さんになった気分です(ウフッ)。
春採湖畔の花が終わったと書き続けていますが、よくよく観察をすると季節はずれのオドリコソウの花が霜の降りたあとに咲いていたり、セリ科などの秋の芽が残り少ない太陽の恵みを春の芽吹きのために一生懸命ためている様子が見られます。
次回の観察は10月27日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その24】2009年10月28日(水曜日)
先ずは珍しいものをご紹介します。
これはチドリケマン(ケシ科)の実です。通称「オコリンボ」と呼ばれるキツリフネ(ツリフネソウ科)の実と良く似ていますが、実の弾ける勢いや種の飛ぶ速さは比べ物にならないくらい素早く、一瞬なにが起こったのかと思うほどです。花は8月26日にご紹介しました。
ヤブマメ(マメ科)の実を採取してみました。
実は春採湖畔の観察場所では実が付かず、他の場所から採取しました。写真上の3個が地下茎の実です。下の群れが地上茎の実で豆そのものです。アイヌの方が主に食していたのは地下茎の実だそうです。来春どちらが芽を出すか栽培してみることとしました。
来春を待つ秋の芽の第3弾です。
これはネコヤナギ(ヤナギ科)の芽鱗です。
7月7日に爪の先ほどの冬芽をご紹介しましたが、葉柄がとれ中から毛に覆われた立派な芽鱗が顔を出しました。あとは春の軟らかい日差しを待つだけとなりました。何かこの先の冬も苦にならない気分になります。
再びフデリンドウ(リンドウ科)の登場です。
10月7日に、ほとんどは4月の始めに芽吹くと書きましたが、今回30本あまりの小さな芽吹きを次々と発見しました。どうやら4月に芽吹くとは私達の思い違いで、この時期から芽吹き枯葉や雪の下で春の来るのをジッと待っているのが実情のようです。まだまだ新しい発見がありそうです。
ここからは観察を続ける秋芽です。
これは8月17日に花をご紹介したネジバナ(ラン科)の秋芽です。花が咲いているときは他の草に覆われほとんどこの葉が見えません。この秋芽はどのようにして冬を越すのかマークをつけて観察を続けることにしました。
キジムシロ(バラ科)の秋芽です。
キジムシロの花は4月17日の咲き始をご紹介しました。すっかり草刈の済んだ野草園の土手に芽吹いていました。花の咲く早さからこのまま冬を越しそうですが、確認のため観察を続けることとしました。
ツルネコノメソウ(ユキノシタ科)も秋芽を出していました。
こちらも夏に伸ばしていたほふく枝が無く、明らかに秋に出た新しい芽です。傾斜地の木の根元に出ていましたので、雪はかぶりません。どのようにして春を待つのか観察を続けてみます。
平成の花咲爺さん三度の登場です。
前々回はコウゾリナ・前回はオドリコソウそして今回はメマツヨイグサ(アカバナ科)の花です。花の後ろ右上に伸びているのはこの固体の種を飛ばし終えた枯れ木です。その途中から新たな花が、いえつぼみまでついています。春採湖畔をゆっくり観察するとこんな楽しいことがいっぱいありますよ!!
予定の10月27日は、台風第20号の影響で雨降りとなり観察は28日に、撮影は26日と28日に行いました。
今回は秋の芽を徹底的に観察したところ、フデリンドウの多数の芽吹きを見つけ、私たちが常識としていたことが打ち破られてしまいました。まだまだ知らない世界が山ほどあることを思い知らされた観察でした。
次回の観察は11月5日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
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