【博物館友の会】春採湖畔植物フェノロジー調査<2009年9月>
釧路市立博物館友の会会員による“春採湖畔らしさを探すための”春採湖畔植物フェノロジー調査
【その19】2009年9月5日(土曜日)
オオヤマサギソウ(ラン科)の花を見つけました。
私達が調査を行っているコースから少し離れた場所で、こんな花を見つけてしまいました。
2003年~2005年の花暦200選の調査でも発見されなかった花です。
下の写真は花の部分のクローズアップです
咲き終わりに近いので黒い部分が見られますが、白鷺が羽根を広げ水辺に下りてくるような様子を感じとることができます。草丈はおおよそ60センチ位で多年草ですから、来年も見られることを楽しみにしています。8月中旬から下旬頃に開花したものと思われます。
ユウゼンギク(キク科)が開花しました。
前回のご紹介で、次回の開花を予想したとおり咲き始めました。この花はこれから春採湖畔遊歩道脇のいたるところで咲き誇り、10月に入っても咲いていますので、今年の花の季節の終わりを名残惜しみながらじっくりと見てあげてください。北アメリカ原産。
ナナカマド(バラ科)の実が赤くなりました。
最近の新聞で、秋近しと実の色づきを紹介していますが、春採湖畔でも色づいていますよ。
この日は雨降りでしたが、雨に濡れた赤い実も結構美しいものです。でも、青空に映える赤い実はもっとすばらしいですよ。是非見てあげてください。
ケヤマハンノキ(カバノキ科)の冬芽です。
3月28日のHPで、この花の開花をご紹介しましたが、その元になる冬芽が付いていました。枝先に4本ほど見えるのが雄花の芽、葉柄付け根に小さく2個見えるのが雌花の芽です。この状態で厳しい冬をすごし、雪解けの日差しをいっぱいに浴びて開花するのです。
エゾノコギリソウ(キク科)の花です
ひぶな坂下の踏み切り付近で観察をしました。エゾノコギリソウは7月28日ご紹介のキタノコギリソウのように葉が羽状に裂けず細かい鋸歯縁で基部に葉片はありません。手っ取り早い見分け方は、エゾノコギリソウは葉が小さく鋸歯が細いことと、花の色が白いことが多いことです。
サワヒヨドリ(キク科)の花です。
これもひぶな坂下の踏み切り付近です。
前回ご紹介のヒヨドリバナとの違いは、6枚の葉が輪生状についている場合が多いことと、花の色がヒヨドリバナは白~微紅色、サワヒヨドリはヒヨドリバナより濃色で淡紅色であることなどです。
エゾノキツネアザミ(キク科)の花です。
前回のエゾヤマアザミのところで、バーベキューコーナーの下の遊歩道脇で最近少なくなってきたとご紹介した花が、ひぶな坂下の踏み切り付近で咲いていました。茎が上の方で分枝するのが特徴です。ヨーロッパ原産。
シロバナシナガワハギ(マメ科)の花です。
これもひぶな坂下の踏み切り付近ですが、群落で咲いています。ただし、花の最盛期は8月上旬でほとんど終わりに近づいており、咲き残り程度でした。ヨーロッパ~中央アジア原産。
ビロードモウズイカ(ゴマノハグサ科)です。
この花もひぶな坂下の踏み切り付近で、私の背丈より大きくなっていました。花期は終わりで穂先に僅かに黄色く残っている程度でした。全体に綿毛状の毛で覆われビロードの感触が名の由来でしょう。ヨーロッパ原産。
この日は朝から雨が降っていました。午前中の僅かな止み間を利用して、通常の観察コースとは違うひぶな坂下の踏み切り付近を調査してみました。いろいろな花が咲いており驚きましたが、ほとんどが外来種で、これらの種がよく鉄道草と呼ばれるわけがわかりました。通常のコースは後日観察します。
次回の観察は9月15日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その20】2009年9月15日(火曜日)
ナギナタコウジュ(シソ科)の開花です。
「春採湖畔花ごよみ200選+α」でも200選のトリをとる花として紹介されています。
この花が咲くと春採湖畔に花の終わりが告げられることになります。花の形が花穂の一方に並び咲くことから、薙刀の名をもらいました。
センボンヤリ(キク科)の秋の花です。
5月17日のHPで春の花をご紹介しました。これは秋の花です。この形からセンボンヤリと名が付いたようです。
秋の花は閉鎖花ですから開花せずに、耳かきの梵天のような実となって開きます。
アキノウナギツカミ(タデ科)の花です。
金平糖ではありません花です。茎に鋭いトゲがたくさん付いており、うっかり触ると怪我をします。この茎でうなぎをつかんでも逃げられない程との思いで名をつけたのでしょうか?葉はやじり形の三角形で、葉が茎に抱きついています。
*2022年現在、和名はウナギツカミが使われています。
オオバセンキュウ(セリ科)が開花しました。
セリ科の花では遅咲きです。今の春採湖畔ではセリと共に咲いています。葉柄が節々でカクカクと曲がる特徴があります。(私達はカックンセンキュウとあだ名をつけています)いま少しの間見ることが出来ますよ。
アラゲハンゴンソウ(キク科)の花です。
7月下旬から咲いていましたが、他の花が華々しく咲いているのでご紹介する機会を逃していました。特定外来生物法指定のオオハンゴンソウに似ていますが葉や茎に荒い毛があることで見分けてください。北アメリカ原産。別名:キヌガサギク
ハナタデ(タデ科)の可愛い花です。
8月26日のHPでご紹介したイヌタデの仲間ですが、全体に小柄で花もまばらに付きます。でも、よく見ると可愛いでしょう。春採湖畔の半日陰の遊歩道脇に集まって咲いています。踏みつけないようにご配慮くださいね!
チョウセンゴミシ(マツブサ科)の赤い実です。
6月16日のHPで花をご紹介しました。そのときの雌花が赤い実をつけました。これぞ「甘・酸・鹹(塩辛)・苦・辛」の5つの味のする生薬です。薬草の本には熟した実を焼酎につけて飲用すると、滋養・強壮・疲労回復に効くと書いてありますが、私は試したことはありません。
コウライテンナンショウ(サトイモ科)の実です。
こちらも6月16日に花をご紹介しました。春採湖畔の所々で実が赤くなり始めていますが、今年は夏の天候のせいでしょうか、実の形がいびつのものが多く見られます。観賞用に持ち帰る方を見かけますが有毒ですよ!!
調査班は責任を取りません。
クイズです、何の実でしょう。
中心に真っ赤な実があり、その実を三角形の内花被がカバーしています。内花被には鋭い歯牙があります。これはエゾノギシギシ(タデ科)の特徴です。エゾノギシギシは農家にとっては天敵ともいえる雑草ですが、こんな綺麗な実で一時の華やかさを味あわしてくれます。
今回の最初にご紹介したナギナタコウジュの開花で、春採湖畔の花たちも咲きそろいました。でも、まだまだユウゼンギクなどの花が咲き残っています。湖畔にお出かけになり有終の美を見てあげてください。なお、今後のHPではこれまでにご紹介できなかった花や実などの話題を掲載していきたいと思います。
次回の観察は9月26日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その21】2009年9月26日(土曜日)
カラフトアカバナ(アカバナ科)を発見しました。
調査予定日前日の予備調査で発見しました。
春採湖畔のアカバナはこれで3種目となります。この際その3種とその違いをまとめてご紹介しましょう。カラフトアカバナは、茎の稜線上に短い屈毛がある。花の柱頭はこん棒状、子房には屈毛が密にあり、腺毛がまばらにまじる。花柄はごく短い。
こちらはエゾアカバナ(アカバナ科)です。
撮影日は7月17日です。エゾアカバナは茎が円柱形で稜がなく、上方に屈毛が密にあります。花は柱頭が4裂しているのがこの種の特徴です。
なお、カラフトアカバナの発見は、他のアカバナ種が既に種を飛ばしているのに、今だに咲いていることに疑問を持ったことでした。
こちらはイワアカバナ(アカバナ科)です。
撮影日は8月7日です。イワアカバナは春採湖畔では多数派で、あちらこちらで見ることが出来ます。茎に屈毛を散生するのがこの種の特徴で、花柱が頭状です。これら3種の見分けは柱頭を観察するのが早いと思います。
今回は、滝田謙譲著北海道植物図譜を参照させていただきました。
マイヅルソウ(ユリ科〈クサスギカズラ科・キジカクシ科)の実が目立っています。
今、春採湖畔の日陰地の地面では、あちらこちらでマイヅルソウの赤い実が目立っています。右側の真っ赤な実4個の上にやや白い実が見えます。赤くなる前はこのような色で、よく見ると小鳥の卵のような模様が付いています。綺麗ですよ。
マイヅルソウの花が再びの登場です。
この花は、5月29日のHPでご紹介した花を再登場させました。上の実の写真はまさしくこの花に付いた実です。調査班は、出来るだけ同じ場所の同じ花の季節変化を観察しています。
カンボク(スイカズラ科〈ガマズミ科〉)の実が真っ赤です。
春採湖畔の所々で、葉が落ちたカンボクの枝に真っ赤な実が美しく付いています。これまでカンボクの花をご紹介していなかったので下にご紹介します。カンボクの飾り花は花弁ですから落ちてしまいますので、実だけが残って目立つのです。
こちらがカンボク(スイカズラ科〈ガマズミ科〉)の花です。
撮影日は6月27日です。白い飾り花が回りについて、8月7日のHPでご紹介したノリウツギに似ていますが、こちらは飾り花が落ちてしまいます。なお、ノリウツギや園芸種のアジサイはユキノシタ科(APG分類体系ではアジサイ科)で、飾り花はがく片ですから落ちずに冬でも枯れ残っています。
オオアマドコロ(ユリ科〈クサスギカズラ科・キジカクシ科〉)の実です。
これも継続して季節を観察しています。
場所は緑風荘通り下の遊歩道脇です。
6月下旬には子房が膨らみ始め、7月の実は緑色をしています。8月下旬から黒味がかりはじめ、今はこんなに立派な実になっています。
こちらがオオアマドコロ(ユリ科〈クサスギカズラ科・キジカクシ科〉)の花です。
春の芽吹きはギョウジャニンニクに似ています。花は白い房状で先が緑色をしています。花弁が大きく開きませんので、開花の確認はマルハナバチが蜜を求めて来ているかどうかで見極めます。この花の撮影日は5月29日です。
春採湖畔では、ユウゼンギクやネバリノギクなどの菊類が咲いていますが、観察の度に花が少なくなっていき、何か秋の寂しさが漂ってきています。今後ここでご紹介する種は一段と少なくなってくると思いますが、今しばらくのお付き合いをお願いします。
次回の観察は10月7日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
このページに関するお問い合わせ
生涯学習部 博物館 博物館担当
〒085-0822 北海道釧路市春湖台1番7号 博物館
電話:0154-41-5809 ファクス:0154-42-6000
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。