【博物館友の会】春採湖畔植物フェノロジー調査<2009年7月>

ページ番号1002714  更新日 2023年3月12日

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釧路市立博物館友の会会員による“春採湖畔らしさを探すための”春採湖畔植物フェノロジー調査

【その13】2009年7月7日(火曜日)

ノハナショウブ(アヤメ科)からのご紹介です

写真:ノハナショウブ

ノハナショウブは外花被基部中央に黄色い斑が入るのが特徴です。
ところで、ノハナショウブは端午の節句にお風呂に入れるショウブとは全く違う植物です。あちらはサトイモ科で、ミズバショウなどの仲間です。

エゾタツナミソウ(シソ科)の開花です。

写真:エゾタツナミソウ

2003年~2005年に行った「春採湖畔花ごよみ200選+α」の観察では、いつも葉が虫に喰われていましたが、今回はどの固体も綺麗な葉とたくさんの花がついていました。花が招き猫の手のような形は、シソ科ナミキソウ類の花に多いパターンです。

クモキリソウ(ラン科)の花です。

写真:クモキリソウ

花も葉と同じ淡緑色をしているので、良く見なければ発見が難しい花です。緑風荘通りの緑地帯に案内看板が立ててあります。ラン科特有の唇弁が緑色で反り返っていますので、ゆっくりごらんください。貴重種です、絶対に採取しないでくださいね!!

ウツボグサ(シソ科)が開花です。

写真:ウツボグサ

海の獰猛なウツボを思い出された方もいられるかもしれませんが、こちらは武士が矢を入れて背負う靫(ウツボ)のことです。茎頂の花穂から花弁が次々と咲きます。この花も招き猫の手状をしています。

エゾノレンリソウ(マメ科)の花です。

写真:エゾノレンリソウ

「連理」を突き詰めて行くと、中国唐の時代の詩人、白楽天の長編叙事詩「長恨歌」に詠まれた玄宗皇帝と楊貴妃の物語。「天にありては比翼の鳥となり、地にありては連理の枝とならん」に辿りついてしまいました。
懲りすぎでしょうか?

ハマエンドウ(マメ科)も開花です。

写真:ハマエンドウ

野草園内の人為的影響を受けたところは、早くから咲いていましたが、自然の状態ではようやく開花です。春採湖畔では、今はセリ科の花が最盛期ですが、これからマメ科の花が次々と咲き始めます。

ヤナギトラノオ(サクラソウ科)の花です。

写真:ヤナギトラノオ

葉は広めの柳の葉状で、黄色い房状花序で咲きますが、虎の尾ほど長くはありません。
今年は雨の日が多く、春採湖の水位も高かったせいでしょうか、遊歩道脇ではいまだに咲いていません。これは遊歩道から離れた場所で撮影しました。

チシマアザミ(キク科)が咲いています。

写真:チシマアザミ

春採湖畔のアザミ類では、花が下を向いて咲きますので直ぐ見分けられます。写真3個の花のうち中央は咲き終わっています。右側が開花中で花粉が出ていました。左側はまだつぼみです。葉の基部から茎にかけトゲガあり結構痛いですよ。(経験済み!!)

*アザミ類は2022年現在、分類学的研究が進行中です。

ヤマブドウ(ブドウ科)の花です。

写真:ヤマブドウ

ゴマツリ岬の遊歩道脇で撮影しました。ヤマブドウは雌雄異株で、写真の花は雄花です。残念ながら実は付きません。ヤマブドウの花は開花と同時に花弁が落ちてしまい、雄しべ・雌しべがむき出しになります。実ばかり探さず花も見てあげてください。

フランスギク(キク科)の花です。

写真:フランスギク

原色牧野植物大図鑑(牧野富太郎博士著)によりますと、フランスではこの花をマーガレットと呼びますが、日本ではマーガレットは別種で、別名モクシュンギク(カナリア諸島原産)と呼ばれる葉が食用の春菊に似た植物と記されています。(ヨーロッパ原産)

エゾノクサイチゴ(バラ科)が実りました。

写真:エゾノクサイチゴ

5月17日の観察で花を紹介したエゾノクサイチゴの実です。1cm程度の小さな実で、とてもスーパーには並べられません。春採湖畔では採取せずに見るだけにしてくださいね!

ネコヤナギ(ヤナギ科)の冬芽です。

写真:ネコヤナギ

ネコヤナギがもう来春の準備をしていました。
矢印の先の爪のような芽が越冬し、来春芽吹いて花をつけます。こうして観察を続けると植物の奥深さが感じられます。

シロバナハマナス(バラ科)です。

写真:シロバナハマナス

北海道の方には余り珍しくない花ですが、ハマナスといえばローズピンクと思っていらっしゃる本州の方にご覧に入れます。
結構綺麗でしょ!!突然変異で出来たのか、もともとあったものなのか、私の所有する図鑑では判明しませんでした。


この日も釧路の最高気温が24.0℃、真夏ですよ、真夏!!今年は春が高温かと思えば5月下旬から雨と低温など、元気象庁職員の私でも変化が激しい年だなと思います。春採湖畔の草花たちは、子孫繁栄のためとは言え、それに耐えて咲き誇ってくれています。
次回の観察は7月17日の予定です。

(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)

【その14】2009年7月17日(火曜日)

ゲンノショウコ(フウロソウ科)の花からご紹介です。

写真:ゲンノショウコ

2009年6月27日のホームページでご紹介した「イチゲフウロ」の花と見比べてください。とっても良く似ているでしょう。でも、花弁の先など少し違うでしょ!!こちらは漢字で「現の証拠(すぐ効くよ!)」と書くほどのれっきとした薬草です。

夏の花:メマツヨイグサ(アカバナ科)の開花です。

写真:メマツヨイグサ

夏といえばこの花ですよね!この花は日暮れに咲き始め夜明けにしぼみます。昼間の写真ではこのように半分しぼんでいます。上のほうにつぼみがたくさんついていて下から順番に咲いていきます。北アメリカ原産の帰化植物です。

ヒナマツヨイグサ(アカバナ科)の花です。

写真:ヒナマツヨイグサ

メマツヨイグサの仲間ですが、草丈も花もとても小さいです。原色牧野植物大図鑑(牧野富太郎著)によると、待つ宵草と月見草は別の花で、同じ頃に北アメリカから観賞用として渡来したが、月見草は弱いため野生化せず、今日ではほとんど見られないと書いてありました。

ホザキシモツケ(バラ科)が咲きました。

写真:ホザキシモツケ

花弁より雄しべがはるかに長く、綺麗なピンク色の花が群落で咲くととても綺麗です。
また、1花序の開花期間は10日ほどですが、次々と咲くため長く見ることが出来ます。
こちらはれっきとした木です。

こちらはエゾノシモツケソウ(バラ科)です。

写真:エゾノシモツケソウ

ホザキシモツケと同じ仲間ですが、こちらは草です。「あなたが選ぶ春採湖畔花暦200選」の投票で2位になった花です。皆さん散らし寿司の上に乗っている「鯛デンブ」を思い出したのかも知れません。ジッと見ているとお腹が空いてきますよ!!

キンミズヒキ(バラ科)の開花です。

写真:キンミズヒキ

バラ科の花続きです。こちらは花よりも実になったときのほうが印象深いのではないでしょうか。そうです泥棒草と呼ばれ、衣服にくっつきます。でもこの実からマジックテープが考案されたと聞きました。社会貢献度の高い草花ですよ。

エゾイヌゴマ(シソ科)の花です。

写真:エゾイヌゴマ

実の形はゴマそっくりですが、食べられません。「イヌ」と名のつく植物は往々にして食用にならないという意味があるようです。
また、「似ているが偽者」にはキツネなどの名がつくことが多いようです。

フタバハギ(マメ科)の開花です。

写真:フタバハギ

葉が対生で茎に直接つくため二葉萩といわれるようです。葉がナンテン(メギ科)の葉に似ていることから別名ナンテンハギとも言われます。花だけ見るとエゾヤマハギと見間違えるほど良く似た花が10個ほど集まって咲きます。

こちらも同じ仲間のクサフジ(マメ科)です。

写真:クサフジ

クサフジは、前回ご紹介したエゾノレンリソウと共にこれからが見ごろで、春採湖畔遊歩道脇のいたるところで咲きます。春採湖畔にはマメ科の花が多く、花が独特な形をしていますので直ぐ見分けられると思います。

ミヤコグサ(マメ科)の花です。

写真:ミヤコグサ

原色牧野植物大図鑑(牧野富太郎著)によると「和名の都草は昔京都の大仏の前、耳塚付近に多かったことに由来する」と書かれており、全国に分布しています。釧路周辺では主に海岸に近い草地に多く見られます。

マルバトウキ(セリ科)の花です。

写真:マルバトウキ

セリ科で最も多く咲くオオハナウドの花が終わりかけていますが、葉の丸いマルバトウキが遅ればせながら咲いていました。セリ科の花もこうして見ると何か癒される感じがして、私はとても好きです。

ノイバラ(バラ科)の開花です。

写真:ノイバラ

茨(イバラ)とは、もともとトゲを持つ木全体の呼び名です。春採湖畔のノイバラは写真の白花と少しピンクの混ざった花の2種類が咲きます。緑風荘通りの下の遊歩道脇でどちらも見られます。

釧路市の木:ハシドイ(モクセイ科)が咲きました。

写真:ハシドイ

焚き火にすると、バチバチと火の粉が多くはねるので「ドスナラ」などと呼ばれるそうですが、直ぐ火がつく事から昔は石炭に火をつけるときの薪に重宝されたといわれます。
釧路市の「市の木」として指定されています。ちなみに「市の花」はキンレンカです。

オオウバユリ(ユリ科)の大きな花が咲きました。

写真:オオバユリ

オオウバユリは開花・種子形成と共に枯れ死します。つまり自分の身を犠牲にして子孫を残すのです。春採湖畔では秋の結実と共に、毎年大量に刈り取られます(生花用と思われる盗伐)。まもなく見られなくなるのではと危惧しています、絶対に取らないでください。


春採湖畔では、初夏の花・セリ科の花が最盛期を過ぎ、いよいよ夏の花・マメ科とシソ科の花などが見ごろを迎えています。また、シモツケソウ類の花が派手に咲き誇ります。
まだまだ花の見ごろが続きます。是非足を運んでください。
次回の観察は7月28日の予定です。

(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)

【その15】2009年7月28日(金曜日)

ノイバラ(バラ科)のピンクの花です。

写真:ノイバラ

前回で(7月17日)白花をご紹介しました。こちらは少し遅れて咲くピンクの花です。こちらも春採湖ネイチャーセンター駐車場から緑風荘に向かうと見られます。ただし、白花はほとんど終わりかけていました。ピンクも、そう長持ちしませんよ!

オトギリソウ(オトギリソウ科)の花です。

写真:オトギリソウ

「薬草であることの秘密を他人に漏らした弟を兄が切った」という物騒ないわれのある花です。この花は、日当の良いところでは午前中開花し、午後には閉じてしまいますが、日陰地では午後も見られることがあります。
8月中旬からの赤い実も美しいですよ!

トモエソウ(オトギリソウ科)を見つけました。

写真:トモエソウ

春採湖畔では少数派の花で、チャランケチャシで見つけました。5枚の花弁が鎌状にゆがんで巴形となるのが特徴ですが、写真の花弁はこれから咲くつぼみに押されて巴形になっていません。1日花で夕方にはしぼんでしまいますよ、急いで見に行ってください。

ホソバノキリンソウ(ベンケイソウ科)の花です。

写真:ホソバノキリンソウ

春採湖畔旧科学館下の遊歩道脇で咲いており、1花序に多数の花をつけます。ベンケイソウ科共通の特徴は、葉が肉厚で葉だけ摘んで土に挿しておくとやがて根を張り再生します。その強さを弁慶の強さと重ね合わせたといわれます。

キタノコギリソウ(キク科)が満開です。

写真:キタノコギリソウ

葉がノコギリの歯のように見えることからついた名です。似た花にヨーロッパ原産のセイヨウノコギリソウがあり、白い花で道端のいたるところにはびこっています。春採湖畔では鋸歯が更にこまかい在来種のエゾノコギリソウが、ひぶな坂下の踏み切り付近で観察できます。

秋の七草:オミナエシ(オミナエシ科〈スイカズラ科〉)の花です。

写真:オミナエシ

女郎花と書きます!花を穀物の「アワご飯」の粒に見立てて女飯(おんなめし)から来た名ではと言われます。私の出身地、十勝の一部では盆花と呼ばれ、この花を見ると墓参りを思い出します。オトコエシ(男郎花)という花もあるのですよ!

エゾノカワラマツバ(アカネ科)が咲きました。

写真:エゾノカワラマツバ

松の葉に似た葉をして川原に生えるというのですが、釧路市立博物館裏の野草園南側の藪の中で咲いていました。茎や子房・実にも短毛が密にあり、花が黄色いのが特徴です。
オオバノヤエムグラやキクムグラと同じ仲間です。

ヤナギラン(アカバナ科)の季節です。

写真:ヤナギラン

ヤナギランは、春採湖畔より釧路湿原のほうが群落で咲き美しさも格段に上です。湿原を横断する湿原道路脇では、これからタチギボウシ(ユリ科)とヤナギランが競って一面に咲きます、是非観てください。また、観光資源として活用されてはいかがでしょうか?

トウゲブキ(キク科)を見つけてしまいました。

写真:トウゲブキ

蕗に似た根出葉を持ち峠に生えるといわれますが、なんと野草園のシロバナハマナス(バラ科)の中で見つけました。春採湖畔では少数派です。キク科の花に多いパターンの、頭花の外側一列が舌状花・中心部は管状花です。

エゾコゴメグサ(ゴマノハグサ科〈ハマウツボ科〉)の開花です。

写真:エゾコゴメグサ

まもなく米粒のような花がたくさん咲きますが、見ごろの期間は短いのです。茎には下向きに寝た白い毛が密生し、対生した葉の葉脈から小さな花が顔を出しているように見えます。2個の花弁は唇形で下の花弁が3つに裂けています。

ミツバフウロ(フウロソウ科)の花です。

写真:ミツバフウロ

あれー!と思われたでしょうか?6月27日ご紹介のイチゲフウロとそっくりでしょう。花で見分けるのはとても難しいです。葉がイチゲフウロより切れ込みが小さく、山菜のミツバ(セリ科)に似ていることで見分けてください。春採湖畔遊歩道脇にたくさん咲いていますよ!

ドクゼリ(セリ科)の花です。

写真:ドクゼリ

花がほぼ球形の複散形花序(写真の形そのまま)に多数つきます。名の通り猛毒がありますが、若い芽は山菜のセリに割りと似ていますので十分ご注意ください。判別のつかない山菜やきのこ類は採らない・食べないが安全の秘訣です。

イ(イグサ科)の花です。

写真:イ

別名イグサですから、そのまま畳表の草です。花は茎の先につきますが、その位置から上に向かって苞の葉が伸びるので、茎の途中に花がついているように見えます。イの語源ははっきりしませんが、畳むしろを作るため居から出たのではという説があります。

ミヤママタタビ(マタタビ科)に実が付きました。

写真:ミヤママタタビ

今年のミヤママタタビの花はあまり多くなく、実が付くか心配していましたがちゃんと付いていました。植物は子孫を残すため頑張っているのですね!(要らぬ心配でした)。
熟すと甘いのですが、果実酒にするほどはありません。採らないでくださいね!


今年の釧路のお天気はどうなっちゃったのでしょうか?雨ばかり降っています。6月の降水量は平年の2倍、7月はこれまでに2.4倍降っています。春採湖畔の草花達も影響を受けないはずはありませんが、懸命に背を伸ばし、けなげに咲いてくれています。
次回の観察は8月7日の予定です。

(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)

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