【博物館友の会】春採湖畔植物フェノロジー調査<2009年6月>
釧路市立博物館友の会会員による“春採湖畔らしさを探すための”春採湖畔植物フェノロジー調査
【その12】2009年6月27日(土曜日)
オニグルミ(クルミ科)の花です。
場所は春採湖ネイチャーセンター前の緑地帯です。バンザイ形に広がった葉の間に真っすぐ上に伸び赤く見えるのが雌花です。その下にハの字形に垂れ下がっているのが雄花です。
この木ではほとんどが雄花で、雌花はこれ一つでした。実が付くと良いですね!!
シウリザクラ(バラ科)が満開でした。
春採湖畔、6種の桜の中で最後に咲く花です。
穂状の花序に多数の花をつける様子は瓶洗いブラシを連想しませんか?私はオーストラリアで見たその名もずばり、ボトルブラシという赤い花を思い出しました。
ミズキ(ミズキ科)の花です。
水のような樹液の多い木が名の由来と言われます。枝先の花序に多数の花が集まって咲き、花弁は4枚です。この木はアイヌ語でイナウニニと呼ばれ、儀礼に欠かすことの出来ない祭具「イナウ」を作ると、ヤナギで作られたイナウより重く見られたといわれます。
お待たせしました!ハマナス(バラ科)の花です。
北海道の花です。今年は6月の低温と長雨で春採湖畔では開花が1週間ほど遅れていました。釧路市立博物館裏の野草園では白い花のハマナスも開花していました。赤や白の花と艶のある葉がマッチングして、とても美しく見えるのですよね!!
エゾスカシユリ(ユリ科)が見頃です。
「蝦夷透百合」と書くように、花弁の付け根付近が空いていて、下から空が透かして見えると言う事だそうです。緑の葉の生い茂った中に鮮やかな淡黄赤色で目立ちますが、花弁にあるアバタがご愛嬌かも…。
エゾフウロ(フウロソウ科)の花です。
春採湖畔のフウロソウ科の中では大き目の花で、長い花序に2個の花がつきます。写真でも、花の下に首を垂れているのが次に咲く花です。一つ一つの花の命は短いのですが、次々と咲くので長く咲いているように思われます。
こちらはイチゲフウロ(フウロソウ科)です。
同じフウロソウ科のゲンノショウコに葉も花もとても良く似ています。ゲンノショウコは開出する毛が蜜にありますが、イチゲフウロは下向きの寝た毛で一見毛が無いように見え、花弁の先が少しくびれています。ゲンノショウコは有名な薬草ですがイチゲフウロは薬草図鑑に載っていません。
ギョウジャニンニク(ユリ科〈ヒガンバナ科〉)の花です。
春の山菜としてはあまりにも有名ですが、この時期花を見てくれる方はあまり多くありません。春採湖畔では群落で生えることはありませんが、それでも採取されます。この花は貴重な生き残りです。
エゾオオヤマハコベ(ナデシコ科)が咲きました。
春採湖畔遊歩道脇の至るところで咲き、これから秋まで長く見ることが出来ます。花弁の先が深く裂けており、多数あるように見えますが、他のハコベ類同様5枚なのです。
採取実験禁止!!
オオカサモチ(セリ科)の開花です。
春採湖畔のセリ科の花では一番大きく、茎が真っ直ぐ伸びるので目立ちます(セリ科で一番大きいのはエゾニュウですが春採湖畔では見られません)。多数の花序に小さめの花をたくさんつけます。私は躰体が大きいのでとても親しみを覚えるのですが…。
カンボク(スイカズラ科〈ガマズミ科〉)の花です。
この花の白く目立つ花弁は飾り花で、雄しべ・雌しべを持つ花は中央の小さな花です。
同じく飾り花をつけるノリウツギ(ユキノシタ科〈アジサイ科〉)の飾り花はがく片が変化したものです。いずれも、虫を呼ぶためでは…と言われますが定かではありません。木に聞いて!!
エゾカラマツ(キンポウゲ科)の花です。
エゾカラマツの花です(花火ではありません)。実はこの花には花弁が無く、花に見えるのは雄しべです。春採湖畔には、仲間のアキカラマツがあり葉の先が尖っているのがアキカラマツ、丸みを帯びているのがエゾカラマツとは言いますが…?花ははっきり違います。
*2022年時点で、エゾカラマツはほとんど見られなくなっています。
この日は釧路の最高気温が23.8℃、釧路人にとっては真夏です。他の地方の人に笑われそうですが、何せ釧路地方気象台の観測では、ここ100年間で30℃を超えたのが5回程度なのですから…(うらやましいでしょう!!)。低温と大雨の6月が終わり、いよいよ春採湖畔では夏花の競演が始まりました。見に来てください!!
次回の観察は7月7日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その11】2009年6月16日(火曜日)
ズミ(バラ科)が満開です。
主のいなくなった旧科学館の前庭で、見る人もなくズミが満開の花を開いていました。北大出版の「北海道の樹」には、ズミの別名を「コリンゴ」、エゾノコリンゴを「サンナシ」と記されています。ズミの葉はときに3~5つに中ほどまで裂けますがエゾノコリンゴは鋸歯のみです。
ミヤマザクラ(バラ科)も満開です。
ミヤマザクラは別名「シロザクラ」といわれるほど真っ白な花を総状につけます。春採湖畔の桜は、あと「シウリザクラ」の開花を待つだけとなりました。先に掲載した「ズミ」とともに、今週の土日(20日-21日)頃が見納めになりそうです。
ナナカマド(バラ科)も満開です。
北海道を代表する街路樹のナナカマドですが、花を見上げてめでる人は少ないと思います。冬の葉が落ちた後の真っ赤な実に、雪が降り積もったときほど絵になりませんが、今が見ごろの花が咲いていますよ。
アヤメ(アヤメ科)が咲きました。
アヤメは外花被片(外に開く花弁に見えるガク)の基部は鮮黄色で青紫色の網目が著しく、内花被(中に立つ花弁)が大きく直立しています。
葉は幅5~12mmと細く主脈が目立ちません。同じく細い葉の、ノハナショウブは主脈が太くはっきりと浮き出ます。咲いていますよ。
こちらはヒオウギアヤメ(アヤメ科)です。
ヒオウギアヤメの一番の特徴は、内花被が非常に小さく、写真の外花被と内側に立つ雌しべと雄しべの影に、針のように細い内花被があるのですが見えません。アヤメと同じく外花被基部に網目がありますが、アヤメより大型で分枝し、花柄の基部に苞がつきます。
キショウブ(アヤメ科)も開花です。
キショウブはヨーロッパ原産で、観賞用として輸入されました。水辺や湿地を好み、この写真も旧科学館下の遊歩道脇の湖水縁で撮りました。黄色が目立つ花です、すぐ見つけることが出来るでしょう。
コウライテンナンショウ(サトイモ科)の花です。
春先の若茎が蛇の肌に似ていることから、マムシグサとも呼ばれます。ミズバショウと同じ仲間ですから、花は苞の中に咲きます。雌雄異株で秋には赤く目立つ実を付けるため、観賞用に持ち帰る方がいますが有毒です。触らないほうがいいですよ!!
チョウセンゴミシ(マツブサ科)の花です。
日本で自生が確認される前に、朝鮮から移入されたといわれ、実は甘・酸・鹹(塩辛)・苦・辛の5つの味がする(名前そのまま…)といわれる生薬です。1本の木に雄花と雌花がつきますが、どちらかの花だけをつけることが多く、雌雄異株といわれることもあるつる性の木です。こちらは雄花。
こちらは雌花です。春採湖畔では、チャランケチャシにはほとんど雄花ばかり咲いていましたが、バーベキューコーナー下の東屋「桜花亭」付近で雌花を撮影することが出来ました。秋には赤い房状の実が垂れ下がり綺麗ですよ。
クマイチゴ(バラ科)の花です。
熊と名がつくだけあって、花も苺にしては豪快です。茎も太く濃い茶色で鋭いトゲが多数あります。下手に触ると怪我をしますよ。しかし、秋には大きく真っ赤な甘い実をつけます。私はヒヨドリと競って食べました。
バイケイソウ(ユリ科〈シュロソウ科〉)が咲きました。
花が梅に似ているでしょう。但し花弁が6枚です。写真後方の葉がケイランに似ていることが名の由来とか…。春先には他の植物に先駆け、枕状の葉が円形に芽吹くことから「ヘビの枕」と呼ぶ地方があります。有毒で農業用の殺虫剤として散布されたこともありました。
カラフトホソバハコベ(ナデシコ科)の花です。
ヨーロッパ・アジア大陸原産の花です。白く可憐な5枚の花弁(2深裂で10枚に見える)の中に、赤い雄しべが美しい花です。葉が目立たず茎先に花が咲いているように見えます。写真の緑の葉は別の植物ですよ。
ツマトリソウ(サクラソウ科)です。
写真の花は白ですが、花弁の縁が薄赤く縁取りされているものがあります。これを鎧の端に別な色で端取(ツマトリ)をすることに例えてつけられた名と言われます。「妻とり」とのロマンチックな話ではありませんでした。(残念!!)
本日の特別サービスです。
フェノロジー観察では、カメラマンの私がいつも最後を遅れて移動します。今回は、そんな私を励ますかのように「ノゴマ」が、とても美しい声で応援してくれ、写真を3枚も撮らせてくれました。
声を聞いたのはメンバーで私だけ…(秘密!!)
ようやく晴れてくれました(雲は多かったのですが…)(感謝)。今回は多目のご紹介です。これからの春採湖畔は、セリ科の花のオンパレードですよ。17日の北海道新聞(釧路・根室版)で、このフェノロジーの紹介もしていただけましたが、記事中の地球温暖化の影響に辿り着くには、気の遠くなるような調査が必要だと痛感しています。次回の観察は6月27日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その10】2009年6月7日(日曜日)
コンロンソウ(アブラナ科)が満開です。
春採湖畔のゴマツリ岬から旧科学館下にかけて、日当たりの良い遊歩道脇が真っ白になるほど、満開のコンロンソウでおおわれています。コンロンソウは漢字で「崑崙草」と書き、花の白さを中国崑崙山脈の雪にたとえたと言われますが、群落を見ると納得できますよ!
オオハナウド(セリ科)が咲き始めました。
オオハナウドは、大きな葉とたくさんの花序を(複散形花序と言います)つけて咲き、春採湖畔遊歩道脇のいたるところで見られますので、セリ科の花の中でも特に目立つ花です。
オオハナウドの花のアップです。
花弁は5数性で、花序の中心部の花弁は同じ大きさですが、外側の花弁2枚が大きく、三日月型で「大」の字に見えることもあります。
なお、オオハナウドと山菜のウドとはまったく異なる植物で、オオハナウドはセリ科、山菜のウドはウコギ科の植物です。(オオハナウドはスーパーでは販売しておりません!!)
シャク(セリ科)も開花です。
シャクはオオハナウドに比べて小さな花ですが集団で咲き、コンロンソウの散った後の春採湖畔の主役を、オオハナウドと競う花です。
やはり、オオハナウドのように花弁の大きさが不同長で、花序の外側の花弁が大きくなります。ちょっと立ち止まって観察してみてください。
コケイラン(ラン科)が咲きました。
春採湖畔には「コケイラン」「ネジバナ」「クモキリソウ」「ミズチドリ」などのラン科の植物があります。
コケイランは冬の間、青々とした葉で越冬し、花が咲き始めると葉が枯れていきます。今年越冬する葉が何時出てくるかが観察の課題となっています。
ラン科の花の特徴である「唇弁」が見えます。
コケイランの名の由来は、葉がケイラン(=紫蘭)に似ている小型の蘭ということと言われています。 まだ、咲き始めですが一週間ほどで枯れ始めます。ゴマツリ岬付近の案内看板を目安にごらんになってください。
エゾゼンテイカ(ユリ科〈ススキノキ科〉)が咲いています。
エゾカンゾウ・ニッコウキスゲ・ゼンテイカ等とも呼ばれますが、エゾキスゲとは違いがあります。
エゾゼンテイカは花序とともに柄が短く、朝開花して夕方閉じる一日花ですが、エゾキスゲは茎頂の長い枝のある花序に花がつき、夕方開花して翌日の昼過ぎ閉じます。
スズラン(ユリ科〈クサスギカズラ科・キジカクシ科〉)がようやく咲きました。
内陸部ではとっくに咲いているのですが、チャランケチャシでようやく咲き始めました。また、春採湖畔ではエゾゼンテイカとともに、お花畑となるほど群落で咲くようなことはありません。それだけ気候が厳しいということでしょうか。ここでは貴重な花です、大切にしてください。
クロユリ(ユリ科)も開花です。
私が子供のころ、お風呂屋さんが空になったという伝説のラジオドラマ「君の名は」で“クロユリは恋の花”と歌われ有名になりました(と言っても50代より若い人には・・・??)。
花の香りを楽しむことはお勧めしません。理由を知りたい方はお試しください、私は責任をとりません。
センダイハギ(マメ科)の花です。
網走管内小清水原生花園では群落で咲き有名な花ですが、春採湖畔でも所々で咲きます。
えんどう豆そっくりの花を見てください、マメ科が理解できますよね!この後はえんどう豆の鞘に毛の生えたような豆がなりますよ。そのときも見てくださいね。
6月は春採湖畔の花の季節です。今回ももっとたくさんの花の写真が撮れたのですが全てをご紹介することが出来ません。ぜひ、皆様の脚で春採湖畔の花たちの晴れ姿を見てあげてください。今回も観察当日は雨になってしまいました。仲間内で、いよいよ私の精進が悪いということになってしまいました。(泣)
次回の観察は6月16日の予定です、晴れて下さい。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
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