【博物館友の会】春採湖畔植物フェノロジー調査<2009年11月>
釧路市立博物館友の会会員による“春採湖畔らしさを探すための”春採湖畔植物フェノロジー調査
【その25】2009年11月5日(木曜日)
ツルウメモドキ(ニシキギ科)の実です。
ツルウメモドキの果実がはじけて、中から美しい黄赤色の実が顔を出して見ごろの季節ですよ。ツルウメモドキは他の木などにからみついて高くまではい登ります。
こちらはツルウメモドキ(ニシキギ科)の花です。
ツルウメモドキは雌雄異株です。この花は雌の木の花で、上の実をつけた木と同じ場所で6月27日に撮影しました。花弁は5枚、雌しべは1つで柱頭が3つに裂けています。
キヌヤナギ(ヤナギ科)の芽鱗がはずれ始めていました。
今回の調査では5~6個の芽鱗が外れていました。この木は昨年12月の観察でも芽鱗が外れていましたが、他の場所のキヌヤナギは3月まで外れませんので、特別な環境の影響を受けていると考えられます。
ウシハコベ(ナデシコ科)の咲き残りを見つけました。
ウシハコベは春採湖畔ではごく少数派で余り見かけません。特徴はハコベの中では50センチほどになる巨人で、子房の上の花柱が5本あります。
こちらはハコベ(ナデシコ科)です。
ハコベは菜園の雑草として普通に見られます。春採湖畔では極寒期以外は雪の下でも咲いています。花が余りに小さいので矢印をつけました。ハコベをコハコベと呼ぶ学者もいます。こちらは花柱が3本です。
エゾオオヤマハコベ(ナデシコ科)が芽を出していました。
花は6月27日にご紹介しています。春先にはもっと閉じた芽がすくすくと伸びてきますので、今は来春のために少しでも栄養を貯めるために芽吹いたと思われます。印をつけて観察を続けることにしました。
釧路では初雪も観測されたのですから、秋の深まりというより初冬となりました。ご紹介する植物も少なくなりましたが、わずかな日差しを求めて植物は秋芽を出し、来春の準備をしています。まるで春と錯覚するような風景も見られますよ。
次回の観察は11月17日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その26】2009年11月17日(火曜日)
イヌキクイモ(キク科)を調査中です。
これは9月15日に撮影したイヌキクイモ(キク科)の花です。キクイモ(キク科)に比べて葉が細めで舌状花の先が裂けません。地下の塊茎(芋)は煮ても食感が良くなく美味しくないといわれます。(私は食べたことがありません)毒は無いようです。
これがイヌキクイモの塊茎(芋)です。
今回の調査の目的は、春採湖畔の旧柏木小学校付近に良く似た植物があるが、葉の大きさや茎の太さなどが少し違う。という情報からその正体を調べることにしました。イヌキクイモの塊茎はやや細長く、大きなもので6~7センチほどでした。
こちらが調査対象の塊茎です。
今回は既に葉が枯れていたため、葉などの詳しい調査は出来ませんでしたが、塊茎には球形部分があり、イヌキクイモとは少し違うようです。しかしキクイモの塊茎を図鑑などで調べると、もっと大きい塊との事です。果たしてイヌキクイモの仲間なのか調査を続けることとします。
ここからは、これまでにご紹介できなかった花などを掲載いたします。
これはイケマ(ガガイモ科〈キョウチクトウ科〉)の実です。
花は8月17日のホームページでご紹介し、実は野菜のオクラにそっくりとしながら、皆様にご覧いただいておりませんでした。時には5~6本固まってぶら下がっていることもあります。
改めてイケマ(ガガイモ科〈キョウチクトウ科〉)の花をご紹介します。
この花は8月7日に撮影したものです。前回の掲載よりイケマの花の特徴(球形)がはっきりしています。11月17日の調査では上のイケマの実が割れて、中の種が綿毛と共に飛び回っていました。
イシミカワ(タデ科)の花と実です。
8月16日の撮影です。春採湖畔ではしばらく発見されずにいました。花は花被がほとんど開かないため、開花の確認が難しくいつの間にか実になってしまいます。茎に下向きの鋭い刺があり他の植物に絡みつきます。1年草ですから、うまく今年の実が発芽してくれると良いのですが…。
*2022年現在、イシミカワは確認できなくなっています。
前回11月5日にご紹介した「ツルウメモドキ(ニシキギ科)」について、オニツルウメモドキ(イヌツルウメモドキ)との説もありましたので、来春改めて詳しく調査をすることとしました。
春採湖畔ではセリ科の秋芽も黄色くなり始めいよいよ冬の到来です。したがって花類はほとんどなくなりましたので、今後のホームページではこれまでに掲載されなかった花についてご紹介していきたいと思います。
次回の観察は11月27日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
【その27】2009年11月26日(土曜日)
今回の調査は27日が雪の予報でしたので26日に行いました。
こんな発見がありました。ツタバウンラン(ゴマノハグサ科〈オオバコ科〉)の花です。
花弁が上下2唇に別れ、上唇は2裂、下唇は3裂して喉部には黄色い隆起があります。下唇が舌弁のようにも見えますがランの仲間ではなく、8月7日にご紹介したシベリヤシオガマと同じゴマノハグサの仲間です。
海岸の砂地や石垣など乾燥したところを好み、春採湖ネイチャーセンタ裏の釧路環状線の坂(通称工業高校坂)の石垣にこの季節でも沢山咲いていました。茎が針金状に細長く石垣の上を這いまわっていました。
梅沢俊著の「新北海道の花」によりますと、通常の花期は5月~9月ですから、そろそろ終わりに近く、写真のように所々に実をつけていました。原産地はヨーロッパで、漢字では蔦葉海蘭と書くそうです。
これも新しい発見です。
これは10月16日にご紹介したエゾノシシウド(セリ科)の秋芽が枯れ始め黄色みを帯びてきたところです。私達はこれが一旦枯れて来春改めて春芽が出てくると思っていました。
ところがなんとこの株の根元の枯れ草をよけてみると、そこには来春の芽が今枯れようとしている秋芽の苞の中から顔を出しているではありませんか!!
オオハナウド(セリ科)の根元も調べてみました。
写真中央左の枯れた花茎の根元に僅かに白い来春の芽が顔を出しています。左下隅に見える葉は秋芽の葉です。他のセリ科の多くも形は違えども来春の芽を地中や枯葉の下に持っていました。
こちらはキンミズヒキ(バラ科)の芽です。
キンミズヒキは、ダイコンソウ類と同じく、昨冬の観察でもこの状態で春を迎えました。
今回の観察では、セリ科の春用の芽には驚かされました。多数の芽が春を待つフデリンドウといい調査によって多く発見があり、これまで私たちが持っていた「植物は春に一斉に新芽を出して…との常識は植物にとっての非常識」だったことを知りました。これら調査した植物の根元の土や枯葉は、以前にも増してかけておきましたのでご安心ください。
次回の観察が最後で12月8日の予定です。
(文章・写真撮影 友の会々員 藤田)
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