1-9~12 釧路の生物2(釧路地方に生き残った生物・釧路湿原総合調査)
1-9 釧路地方に生き残った昆虫
エゾカオジロトンボやイイジマルリボシヤンマ、カラフトルリシジミなどは、北海道より北の寒いところにすんでいた昆虫たちです。
屈斜路湖の和琴半島にすむミンミンゼミや阿寒湖畔のコオロギなどの鳴く虫は、南の暖かい地域でよく見られます。
これらの昆虫は、地球が今より寒かったり暖かかったりした時代には道内の広い範囲にすんでいたものの、気候が変化したために釧路地方では湿原や山の上、火山の近くなど、昔の環境に近い場所だけに生き残ったものです。
地球の環境が今とは違った時代があったことを物語る生き証人といえます。そのためエゾカオジロトンボやゴトウアカメイトトンボ、和琴半島のミンミンゼミは、天然記念物として大切に守られています。
1-10 釧路地方に生き残った植物
エゾウスユキソウはサハリンでは広範囲に生育しますが、北海道では道北と道東にのみ分布しています。これは寒冷期に北海道まで分布を南下させたものの、その後の温暖期に分布の中心はサハリンに移り、道北と道東にのみ生き残った(遺存した)ものです。
サカイツツジは根室の落石岬湿原にのみ、ハナタネツケバナは道東の湿原にのみ生き残りました。クシロハナシノブは、サハリンに生育しているカラフトハナシノブが釧路地方の湿原環境に適応し、一変種となって生き残りました。
一方、本州中部より南の湿地に生育するミズスギという30~40cmほどのシダ植物は川湯や登別温泉に隔離分布しています。これは、温暖期に北海道まで分布を広げたものが、寒冷化後に温暖な地熱地帯に生き残ったものです。
1-11 キタサンショウウオ
サンショウウオはカエルと同じ両生類で、北海道にはエゾサンショウウオとキタサンショウウオの2種類がいます。
キタサンショウウオはユーラシア大陸に広く住んでいるサンショウウオですが、日本では釧路湿原と北方領土の国後島でしか見つかっていません。
1954年(昭和29年)に現在の釧路市北斗付近にあった平戸前小学校の子どもたちが捕まえてきて、校長先生とともに育てながら調べたところ、いままで国内で見つかっていなかったサンショウウオであることがわかりました。
現在、釧路湿原南部地域を中心に分布しており、釧路市の天然記念物として保護されています。
1-12 釧路湿原総合調査
博物館では、1971年度(昭和46年度)から4年間にわたって釧路湿原総合調査を行いました。大学や高校の先生をはじめ、地元の自然や歴史に関心のある方々が大勢参加して、釧路湿原の動物や植物、遺跡などあらゆる調査を行い、貴重な情報や資料が博物館に集められました。
ここでは、調査で集められた昆虫標本の一部を展示しています。この時に見つかった昆虫は、トンボ46種、チョウ84種など約1,150種あまりです。
釧路湿原が、タンチョウやキタサンショウウオなどとともに、珍しい昆虫たちの数少ないすみかであることがこの調査で明らかになりました。
釧路湿原は現在、国立公園として大切に保護されています。
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