ホッキョクグマ繁殖プロジェクト

ページ番号1002230  更新日 2024年2月16日

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道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明【2010年1月28日(木曜日)】

ホッキョクグマの種の保存事業を推進してまいります

2010年1月28日(木曜日)

  • 旭川市旭山動物園
    園長 坂東 元
  • おびひろ動物園
    園長 藤川 研
  • 釧路市動物園
    園長 山口 良雄
  • 札幌市円山動物園
    園長 酒井 裕司

円山動物園では、2008年にホッキョクグマの双子(イコロとキロル)が誕生し順調に成育、さらに2010年に入り、釧路市動物園では円山動物園から貸出中のオスのデナリとメスのクルミの交尾が確認され今後の繁殖が期待されるなど、動物園が取り組んでいる種の保存事業にとって、喜ばしい出来事が続いております。
このたび、今後更にホッキョクグマの繁殖を推進するために、ホッキョクグマの種別調整園である旭山動物園を含め道内4園で協議した結果、次のとおり動物園間でホッキョクグマを移動させることに合意しました。
今後は、この計画を発端として、社団法人日本動物園水族館協会及び加盟園館との連携を深めながら、適齢期の個体を計画的かつ積極的に移動させることで、ホッキョクグマの繁殖を全国的に推進し、動物園の機能の一つである種の保存事業を推し進めてまいります。

移動趣旨

  1. ホッキョクグマの繁殖の可能性を最大限に生かします。
    円山動物園のララは今年の繁殖が可能なことから、釧路市動物園に貸し出中のデナリと早期にペアリングし繁殖を目指します。
    また、円山動物園のサツキを旭山動物園に移動し、イワンとの新たなペアリングを試みます。
  2. 遺伝的多様性を維持した個体増殖を目指します
    デナリとララの血統のみではなく、イワンとサツキの組み合わせのように、新たなペアリングを試み、遺伝的多様性を維持した個体の増殖を目指します。
  3. 円山動物園のララが繁殖を目指すために、子離れする必要があり、イコロとキロルをおびひろ動物園へ移動し、かわりにおびひろ動物園のピリカを円山動物園へ移動します。
愛称(所有権) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期 備考
サツキ
(円山動物園)
メス 18歳 円山動物園 旭山動物園 2月上旬 円山動物園で2年間に渡りデナリとのペアリングを試みたが、交尾に至らず。よって、新たなオス(イワン)とのペアリングを目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
イコロ・キロル
(円山動物園)
オス 1歳 円山動物園 おびひろ動物園 2月中旬 交換先を探しているが、現在まで未定。親個体(デナリ・ララ)の本年中の繁殖のためには、親個体と別居させることが必要。
契約内容:一時的な預託契約
ピリカ
(おびひろ動物園)
メス 4歳 おびひろ動物園 円山動物園 2月中旬 イコロ・キロルをおびひろ動物園へ移動させるために、ピリカを円山動物園に移動。
契約内容:一時的な預託契約
デナリ
(円山動物園)
オス 16歳 釧路市動物園 円山動物園 2月下旬 これまで3回の繁殖に成功しているデナリとララの本年中の繁殖を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約に基づく返還
個体情報(イワン、クルミ、ララは移動対象外)
愛称・(所有権) 履歴 備考
サツキ
(円山動物園)
  • 1991年11月14日 アメリカ・Cleveland動物園生
  • 1992年10月31日 おびひろ動物園へ来園
  • 2007年7月25日 円山動物園へ移動
イワンとのペアリングを目指す
イコロ・キロル
(円山動物園)
2008年12月9日 円山動物園生 父親:デナリ
母親:ララ
ピリカ
(おびひろ動物園)
  • 2005年12月15日 円山動物園生
  • 2007年2月2日 おびひろ動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ
デナリ
(円山動物園)
  • 1993年11月9日 アメリカ・Hogel動物園生
  • 1995年5月1日 円山動物園へ移動
ララとのペアリング再開予定
イワン
(旭山動物園)
  • 2000年12月8日 ロシア・Perm動物園生
  • 2002年6月26日 旭山動物園へ移動
サツキとのペアリングを目指す
クルミ
(釧路市動物園)
1996年12月26日 釧路市動物園生 デナリとのペアリングが成立
ララ
(円山動物園)
  • 1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
  • 1996年5月9日 円山動物園へ移動
デナリとのペアリング再開予定

北海道におけるホッキョクグマの分布図

道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明にかかる中間報告【2010年6月4日(金曜日)】

2010年1月初旬、釧路市動物園で飼育中のクルミ(13歳、メス)とデナリ(16歳、オス)が繁殖行動に至ったことをきっかけに、道内ホッキョクグマ飼育4園は、ホッキョクグマの繁殖推進を目的として、2010年1月28日、共同声明を発表し、2月から3月にかけて5頭のホッキョクグマを移動させた後、各園において繁殖に向けた取り組みを進めてまいりました。
その結果、円山動物園では、釧路市動物園から戻ってきたデナリとララ(15歳、メス)との交尾行動が3月下旬から確認され、さらに円山動物園から旭山動物園に移動したサツキ(18歳、メス)とイワン(9歳、オス)との交尾行動も5月上旬から確認されています。
サツキについては、円山動物園において2シーズン、デナリとのペアリングが試みられましたが、交尾には至りませんでしたので、今回、旭山動物園に移動させて、イワンとのペアリングに成功したことは、積極的に新たなペアリングを構築させることがいかに重要であるかを示していると思われます。
ホッキョクグマの繁殖は大変難しく、まだ、出産に至るかどうかはわかりませんが、1月にデナリとの間に交尾行動が確認された釧路市動物園のクルミと、同じく1月にイワンとの間に交尾行動が確認された旭山動物園とのルル(15歳、メス)とともに、今後の繁殖に期待がもてる結果となりました。

今後繁殖が期待される道内のホッキョクグマのメス
愛称 年齢 現在の飼育園 所有権 ペア形成個体 備考
クルミ 13 釧路市動物園 釧路市動物園 デナリ(16歳) 2010年1月3日交尾
ルル 15 旭山動物園 旭山動物園 イワン(9歳) 2010年1月20日交尾
ララ 15 円山動物園 円山動物園 デナリ(16歳) 2010年3月27日交尾
サツキ 18 旭山動物園 円山動物園 イワン(9歳) 2010年5月6日交尾

※なお、ルルについては、共同声明にかかる移動とは直接の関係はありません

【参考】道内で飼育する全ホッキョクグマ(2010年時点)

旭川市旭山動物園
愛称(性別)
(所有権)
履歴 備考
イワン(オス)
(旭山動物園)
  • 2000年11月20日 ロシア・モスクワ動物園
  • 2002年6月26日 旭山動物園へ移動
 
ルル(メス)
(旭山動物園)
  • 1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
  • 1997年5月22日 東北サファリパークへ移動
  • 2004年10月19日 旭山動物園へ移動
イワンとのペアリングが成立
コユキ(メス)
(旭山動物園)
  • 1975年 野生個体
  • 1979年10月28日 上川ベアーセンターへ移動
  • 1987年4月25日 旭山動物園へ移動
 
サツキ(メス)
(円山動物園)
※1月に発表した共同声明にかかる移動個体
  • 1991年11月14日 アメリカ・Cleveland動物園生
  • 1992年10月31日 おびひろ動物園へ移動
  • 2007年7月25日 円山動物園へ移動
  • 2010年2月9日 旭山動物園へ移動
イワンとのペアリングが成立
おびひろ動物園
愛称(性別)
(所有権)
履歴 備考
イコロ・キロル(オス・オス)
(円山動物園)
※1月に発表した共同声明にかかる移動個体
  • 2008年12月9日 円山動物園生
  • 2010年2月21日 おびひろ動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ
釧路市動物園
愛称(性別)
(所有権)
履歴 備考
クルミ(メス)
(釧路市動物園)

1996年12月26日 釧路市動物園生

デナリとのペアリングが成立
ツヨシ(メス)
(釧路市動物園)
  • 2003年12月11日 円山動物園生
  • 2005年1月22日 釧路市動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ
札幌市円山動物園
愛称(性別)
(所有権)
履歴 備考
デナリ(オス)
(円山動物園)
※1月に発表した共同声明にかかる移動個体
  • 1993年11月9日 アメリカ・Hogel動物園生
  • 1995年5月1日 円山動物園へ移動
  • 2009年3月31日 釧路市動物園へ移動
  • 2010年3月4日 円山動物園へ移動
 
ララ(メス)
(円山動物園)
  • 1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
  • 1996年5月9日 円山動物園へ移動
デナリとのペアリングが成立
ピリカ(メス)
(おびひろ動物園)
※1月に発表した共同声明にかかる移動個体
  • 2005年12月15日 円山動物園生
  • 2007年2月2日 おびひろ動物園へ移動
  • 2010年2月22日 円山動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ

写真:ホッキョクグマ

北海道内4動物園「ホッキョクグマ」の移動の先に見えるもの

動物園長 山口良雄

3月4日朝、飼育スタッフはじめ多くの関係者に見送られ、ホッキョクグマ、オスの「デナリ」が「ララ」の待つ札幌市円山動物園へ帰って行きました。当園の「クルミ」との同居期間は338日間でした。
「デナリ」の釧路市への移動の背景には、一昨年11月に当園の「ツヨシ」並びにおびひろ動物園の「ピリカ」が共にオスではなくメスであることが発表され、2頭を提供した円山動物園、また、ホッキョクグマの国内の種別調整者を擁する旭山動物園、この道内4動物園による連携した取り組みがありました。
とても難しいと言われる動物園でのホッキョクグマの誕生、それ以上に動物園という環境の中で出産後に無事に成長するものはごくわずかです。数字で示しますと、国内では1917年以降、154頭の繁殖に成功しましたが、半年以上生存したのはそのうち21頭。この中では当園が4頭、旭山動物園5頭、昨年双子の誕生で話題となった円山動物園では5頭ですので、道内では14頭の実績となります。
海外からの導入もなかなか難しくなっている状況から、今後国内でホッキョクグマの繁殖を進めていくには、(1)繁殖適齢のメスを保有し、交尾・妊娠に至らない園館は、可能なオスとの繁殖を目指し、積極的に移動を行う。(2)繁殖しない15歳前後のペアは、早急にペアを解消し、産子獲得を目指すべきである。(3)メスが出産後育子できない場合は、愛媛県とべ動物園の繁殖成功例(1999年)を参考にして人工哺育に取組むべきと種別調整会議で提唱されています。
さて、「クルミ」「ツヨシ」のメス2頭を飼育する私たち釧路市動物園は、国内の繁殖に寄与していくことをあらためて表明しました。ホッキョクグマを有する園館にはそれぞれの事情がありますが、道内4動物園は共同して一歩を踏み出しました。今年2月に円山動物園のメスの「サツキ」がオスの「イワン」の待つ旭山動物園に、また、円山動物園の双子「イコル」と「キロル」は子離れする必要がありおびひろ動物園に、かわりにおびひろ動物園の「ピリカ」は、円山動物園に移動しています。
残る当園のメスの「ツヨシ」ですが、1月中の「デナリ」と「クルミ」の交尾を確認しておりますので、夏か秋の「クルミ」の産室への移動時期を見計らい、秋田県男鹿水族館への移動を予定されています。
「みんなでホッキョクグマを守り育てていく!」このことに、これからもご理解とご協力をお願いします。

写真:2頭のホッキョクグマ

写真:動物園 園内の様子

ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明【2011年2月18日(金曜日)】

  • 社団法人 日本動物園水族館協会
  • 旭川市旭山動物園(ホッキョクグマ種別調整園)
  • 札幌市円山動物園
  • 釧路市動物園
  • おびひろ動物園
  • 男鹿水族館GAO
  • 浜松市動物園
  • 豊橋総合動植物公園
  • 大阪市天王寺動植物公園事務所

国内におけるホッキョクグマの飼育頭数は減少の一途をたどっています。この10年間においても、個体数は61頭から45頭にまで減少しており、飼育個体群の維持は、難局を迎えつつあると言え、より積極的な繁殖計画の推進が求められているところです。
2010年11月、ホッキョクグマの繁殖成績を向上させ、飼育個体群を維持していくために社団法人日本動物園水族館協会種保存委員会食肉類「種別ホッキョクグマ繁殖検討委員会」が発足しました。その後、ホッキョクグマを飼育する全国の動物園水族館を対象に「ホッキョクグマの種の保存に関するアンケート調査」を実施し、全国規模での繁殖計画を検討してきたところです。
この結果、遺伝的多様性を残した飼育個体群を維持するため、繁殖可能年齢が終わりに近づきつつある20歳前後のメス個体から優先的にペア形成の可能性を探っていくこととなりました。
つきましては、ホッキョクグマ飼育園館と調整を進めてきた結果、2011年は、次のとおり、個体を移動させることで合意いたしました。移動の日程は現在調整中です。今後も継続的に、全国的なペアの組み換えを積極的に実施し、ホッキョクグマの繁殖に向けた取り組みを推進してまいります。

愛称
(飼育園・所有園)
性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期 備考
クルミ
(釧路市動物園)
メス 14歳 釧路市動物園 男鹿水族館GAO 3~5月 昨年円山動物園の「デナリ」(17歳)とのペアリングに成功し、繁殖が期待されたが、出産に至らず。今後は、男鹿水族館「豪太」(7歳)とのペア形成を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
ピリカ
(円山動物園飼育・おびひろ動物園所有)
メス 5歳 円山動物園 旭山動物園 2月下旬 円山動物園で新たなペア(デナリ×キャンディ)での繁殖体制を進めるには、飼育繁殖スペースの確保が必要なため、旭山動物園に移動。旭山動物園「イワン」(10歳)とのペアリングも視野に入れた移動となる。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
キャンディ
(豊橋総合動植物公園)
メス 18歳 豊橋総合動植物公園 円山動物園 3月上旬 豊橋総合動植物公園で飼育しているオスとのペアリングがうまくいかないため、円山動物園「デナリ」(17歳)とのペア形成を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
バフィン
(浜松市動物園)
メス 19歳 浜松市動物園 大阪市天王寺動植物公園事務所 2~3月 昨年オス個体が死亡し、単性飼育となったため、大阪市天王寺動植物公園事務所へ移動し、「ゴーゴ」(6歳)とのペア形成を目指す。過去3度の出産歴がある。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
キロル
(おびひろ動物園飼育・円山動物園所有)
オス 2歳 おびひろ動物園 浜松市動物園 3月上旬 浜松市動物園で飼育している「バフィン」(19歳)メスが大阪市天王寺動植物公園事務所の「ゴーゴ」(6歳)とのペア形成を目指し移動。浜松市動物園からホッキョクグマがいなくなることから、教育的展示並びに、おびひろ動物園で兄弟で飼育しているイコロ・キロルのオス同士の闘争回避のため、「キロル」を預託。
契約内容:一時的な預託契約

【参考】
2010年1月28日、ホッキョクグマの種の保存事業の推進のため、北海道内飼育4園による共同声明がなされました。2010年2月から3月にかけて5頭のホッキョクグマを移動させ、繁殖に向けた取り組みを各園において進めてきた結果、3園で4頭のホッキョクグマに交尾が認められ、繁殖の可能性がありましたが、以下の結果となりました。

愛称 年齢 飼育園 ペア形成個体 結果
クルミ 14歳 釧路市動物園 デナリ(17歳) 出産に至らず(2010年12月28日公表)
ルル 16歳 旭山動物園 イワン(10歳) 出産に至らず(2011年1月20日公表)
サツキ 19歳 旭山動物園 イワン(10歳) 出産に至らず(2011年1月7日公表)
ララ 16歳 円山動物園 デナリ(17歳) 出産(2010年12月25日)1頭成育中

繁殖の可能性があった4頭中3頭は出産に至らず、結果としては残念ではありますが、1頭の繁殖には成功したことや、交尾を許容しなかった個体がペアを組み替えることにより交尾に至ったことなどを考慮すると、積極的に新たなペアの形成を試みることが、いかに繁殖の可能性を広げることができるのかを示すこととなりました。

国内のホッキョクグマの分布図

  移動前 移動後
旭川市旭山動物園 イワン(オス)
ルル(メス)
サツキ(メス)
イワン(10)(オス)
ルル(16)(メス)
サツキ(19)(メス)
ピリカ(5)(メス)
札幌市円山動物園 デナリ(オス)
ララ(メス)
ピリカ(メス)→旭山へ
デナリ(17)(オス)
ララ(16)(メス)
キャンディ(18)(メス)
おびひろ動物園 イコロ(オス)
キロル(オス)→浜松へ
イコロ(2)(オス)
釧路市動物園 クルミ(メス)→男鹿へ
ツヨシ(メス)
ツヨシ(7)(メス)
男鹿水族館GAO 豪太(オス) 豪太(7)(オス)
クルミ(14)(メス)
浜松市動物園 バフィン(メス)→大阪へ キロル(2)(オス)
豊橋総合動植物公園 チャッピー(オス)
キャンディ(メス)→円山へ
クッキー(メス)
チャッピー(17)(オス)
クッキー(17)(メス)
大阪市天王寺動植物公園事務所 ゴーゴ(オス) ゴーゴ(6)(オス)
バフィン(19)(メス)

現在は公益社団法人日本動物園水族館協会のホッキョクグマ管理計画に基づき、繁殖が進められております。

このページに関するお問い合わせ

生涯学習部 動物園 管理飼育展示担当
〒085-0204 北海道釧路市阿寒町下仁々志別11番 釧路市動物園
電話:0154-56-2121 ファクス:0154-56-2140
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