ホッキョクグマの紹介
食肉(しょくにく)目 クマ科
特徴
個体情報
個体名 | キロル | ミルク |
---|---|---|
性別 | オス | メス |
出生日 | 2008年12月9日 | 2012年12月4日 |
両親 父×母 | デナリ×ララ | 豪太×クルミ |
出生場所 | 札幌市円山動物園 | 秋田県男鹿水族館 |
来園日(出張日) | 2016年4月13日 | 2014年1月31日 |
出張先(移動元) | (浜松市立動物園) | (秋田県男鹿水族館) |
備考 | 繁殖借受中(札幌市円山動物園所有) |
釧路市動物園所有 2023年3月1日に亡くなりました |
一般情報
分類
- 目
- 食肉目
- 科
- クマ科
- 学名(種名)
- Ursus maritimus
- 英名
- Polar Bear
レッドリスト
VU
形態
- 頭胴長
- オス200~250(280)cm メス180~200cm
- 体重
- オス300~650kg(最大値800kg)、メス150~250kg(最大値500kg:妊娠時)
- 肩高
- 170cmまで
- 尾長
- 6~13cm
- 性差
- オスはメスの約2倍
- 外部形態の特徴
-
- グリーンランド東部からベーリング海に向かうにつれて、体のサイズが大きくなる。スピッツベルゲンの集団で最も小さく、ベーリング海峡の集団が最大。
- ユーラシア大陸については、体のサイズのクライン(段階的な変異の仕方)については不明。
- 他のクマ類に比べ、顔はまっすぐ細く、首は長く、また耳は頭胴長比で相対的に短く小さい。
- 毛衣は白か薄く黄色がかっているように見えるが、毛は透明(詳しくは、ちょっとウンチクを参照)
- 下毛(下層の毛)は5cm、剛毛は15cm
- 皮膚は黒い
- 夏毛は冬毛よりも短い。
- 足の裏は毛がよく生えており、肉球には乳頭状の突起あるいは小胞構造が有り、氷の上で滑らない吸盤のような役割をしている。
- 足は大きく、泳いだり氷の上を歩くのに役立っている
分布
北極海とその周辺の氷上や陸上:カナダ、米国アラスカ、グリーンランド、ノルウェイ、ロシア(北極点から0.5°以内での目撃例もある)
生物学的特性
- 生息環境
- 北極圏の氷上で、アザラシ類を狩ることができるプラットフォームが必要。アザラシ類が餌にしている魚類の生産性が高い、結氷と解氷が季節的に起こる場所
- 食性
- 肉食:主に若いワモンアザラシを餌にするが、アゴヒゲアザラシやタテゴトアザラシも餌にする。ホッキョクグマの密度とワモンアザラシの密度は密接に関連している。ワモンアザラシは雪の下の巣穴で子育てするが、ホッキョクグマは多くの場合、巣穴の幼獣か巣穴から出てきた直後の幼獣を食べる。これらのほか、セイウチ、シロイルカが餌となる。アゴヒゲアザラシは主にオスグマが捕食する。夏期、陸上では食べられるものを食しており、トナカイ、海鳥、魚類、鯨の屍肉、植物(ベリー類など)を食するのが観察されているが、それらの餌から十分な栄養を得られない。
- 行動圏
-
- 行動圏は広い。ホッキョクグマの中には4ヶ月の間にアラスカからグリーンランドまで、5200kmも移動する個体もいるが、多くは個々の集団内に留まる(19もの集団が区別されている)
- 行動圏は、地域、生息環境、繁殖条件などによって異なる。海岸近くに住む個体は、遠海の個体よりも行動圏は小さい傾向にある。
- 個々の行動圏の大きさは600,000平方キロメートルから1,000平方キロメートル未満まで幅広い。各集団の行動圏の平均値は、20,000~250,00平方キロメートル
- オスの行動圏は、他のクマ類とは対照的にメスの行動圏よりも狭い。
- 繁殖
-
- ピッツベルゲンでは3月8日~6月20日の期間に番いで行動する雌雄が見られる)。
- 精子形成:2月~5月(6月にかかることもある)
- 発情期間:3日間
- 交尾排卵型。
- 遅延着床(秋に着床し、その頃に巣ごもりする)
- 出産は11月中旬~1月
- 海岸沿いで夏期の餌が手に入らない時期も含めると、メスは出産まで8ヶ月も何も食べていない状態の場合がある
- 妊娠期間:遅延着床期間を入れると6.5~8.5ヶ月(195日~265日)
- 幼獣は3月から4月上旬まで巣穴に留まる。
- 産仔数:2。平均1.58~1.87。3頭出産が珍しくない地域もある。4頭の記録もあるが、乳頭数4から判断して、4頭が限界。
- 初出産年齢:4.6~7.2歳。繁殖成績は十歳代でピーク、20歳を過ぎると低下する。20代後半までには繁殖は終了。
- 野生オスの繁殖可能年齢(精巣内の成熟精子から判定):最少3歳、最高19歳の報告有り。
- 出産間隔:平均2.1~3.6年
- 子の独立:17ヶ月、あるいはもう1年遅い(約29ヶ月)
- 性成熟
-
- メス:最も早い個体で3.5歳 ビュフォート海では5~6歳
- オス:交尾は6歳以降かららしい
- 寿命
- 野生推定 25~30歳(米国デトロイト動物園のメスで43歳10ヶ月)
- 行動・生態
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- 昼行性、単独行動(子育てするメスや交尾期の雌雄を除く)
- 一日の66.6%は、休息、睡眠、もしくは狩猟のための待ち構えで、動きがない。29.1%は移動(歩行や水泳)、残りは餌動物の跡をつけまとったり(1.2%)、摂餌(2.3%)に時間を費やす。
- 活動性は海氷の動態、餌の豊富さなどにより、地域によって異なる。
- 夏期、ホッキョクグマは北方に移動するか、海岸の陸地を使う。
- 妊娠メスは海岸に残り、出産まで巣ごもる。カナダのハドソン湾では、10~80kmの内陸部にあるピート(泥炭)の堤に巣ごもるが、他のところでは、ふつう巣穴は海岸沿いの雪にある。しかし、ビュフォート海では、大半の妊娠メスは流氷上に巣ごもる。
- 冬でも、未妊娠メスは冬眠しない。
- 北緯75度よりも北では、冬、餌探しが難しく天候も厳しいときには、厚い海氷のあるところで避難場所を探す。
- 低緯度では、氷がない時期には、暑さを避けるために、またアザラシ類を狩れないときにエネルギーを使わないようにするために、陸上の避難場所を利用する。
- オス 8~10歳で成獣体重に到達、メス 5歳までに到達
- 天敵:人間、ホッキョクグマ(オスグマは、仔グマに出会うと、襲って補食するため、子連れのメスはオスを避ける)
個体数
推定26,000頭(95%の信頼区間=22,000~31,000頭)
ちょっとウンチク
- ホッキョクグマは、更新世(1万~180万年前)中期の氷河期に孤立したシベリアのヒグマ個体群の一部に起源すると言われている。
- 更新世の終わりには亜種U. m. tyrannusが生息。現存の種では、亜種の区別はない。
- 肝臓に含まれるビタミンAは、1g当たり15000IU~30000IU(ビタミンAのUIは0.300μg)
- 人為的なホッキョクグマとヒグマの交雑により繁殖能力のある雑種が生まれる
- ホッキョクグマは、タンパク質よりも脂質をより効率的に消化する。
- 狩猟:ロシアとノルウェイでは禁止。米国、カナダ、グリーンランドでは管理下の中、先住民(イヌイット)の生計のための狩猟は許可。カナダでは、イヌイットに年ごとに割り当てられた頭数内であれば、地域コミュニティが認めた場合に限り、イヌイットの狩人がガイドする条件で、収入のためのスポーツ狩猟が行われることがある。
- 気候変動による北極圏の環境変化(極地の氷消失)がホッキョクグマ存続の脅威
- 毛衣の保温性機能:
- 光が透明な剛毛の空洞になっている髄で反射、散乱し、その光が隣の剛毛に達し、そこでさらに反射、散乱を繰り返して、下毛へ到達、最終的には黒い皮膚に到達して熱が吸収される。一方、下毛では体からの輻射熱が捉えられ、熱放散(消失)が抑えられる。
- 毛の空洞部分は、迷路様構造となっており、-50℃以下にも達する北極圏の冬でも、外気温よりも数十℃も高い水の中に入ることで、迷路様構造内の温度が水温と同じ温度まで上がり、保温性が増す。
- 毛の中が空洞な動物:アルパカ、トナカイ、ヘラジカ(ムース)など
文献
- Wilson, D. E. & R. A. Mittermeier 2009 Handbook of the Mammals of the World. Vol. 1. Carnivores. Lynx Editions. Barcelona.
- DeMaster, D. P. & I. Stirling 1981 Ursus martimus. Mammalian Species. (145): 1-7
- Gunderson, A. 2009. “Ursus martimus” (On-line), Animal Diversity Web. At
- Wiig, O, S. Amstrup, T. Atwood, K. Laidre, N. Lunn, M. Obbard, E. Regehr & G. Theimann 2015. Ursus maritimus. The IUCN Red List of Threatened species 2015:e.T22823A14871490.
- Knattab, M.Q. & T. Tributsch 2015. Fibre-optical light scattering technology in Polar Bear hair: A re-evaluation and new results. Journal of Advanced Biotechnology and Bioengineering 3: 38-51
- He, J-H., Q-L Wang, & J. Sun 2011 Can Polar Bear hairs absorb environmental energy? Thermal Science 15: 911-913.
解説記事
ワシントン条約 附属書2
現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、その取引を規制しなければ絶滅のおそれのある種になるおそれのあるもの
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