ホッキョクグマ「ミルク」について(続報)

ページ番号1012396  更新日 2023年8月31日

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ホッキョクグマ「ミルク」について

個体情報

ホッキョクグマの個体情報

個体名

性別

生年月日

誕生地

来歴

キロル オス 2006年12月9日

札幌市円山動物園
(父親:デナリ、母親:ララ)

2016年4月13日
浜松市動物園より来園

ミルク メス 2012年12月4日

秋田県男鹿水族館GAO
(父親:豪太、母親:クルミ)

2014年1月31日
男鹿水族館より来園

 

これまでの同居経過

 ミルクは来園時には2歳未満で、まだ未成熟であり、キロルは来園時9歳で通常8歳頃より性成熟するため、既に性成熟しているものと思われた。
 ミルクが5才をむかえ性成熟が開始する年齢と判断し、繁殖のため同居を開始した。
 

【同居歴】
2018年 3/19~3/24、4/6~4/12 計13回
2019年 4/19~5/15 計13回
2020年 2/19~3/15 計19回
2021年 1/5~3/31 計28回
2022年 3/8~7/17 計132回
2023年 1/5~1/16 計11回

 

 ミルクの発情時期特定の為に糞中のホルモン測定を実施していたが、検査結果ではミルクの発情時期は一定ではなく、年によりかなり時期がずれていることが判明していた。そのため発情を逃さないように長期の同居を計画した。2022年は3月から7月の同居を実施したが、同居中にホルモン検査上では発情は確認されなかった。2023年の繁殖計画としては、繁殖の確率を上げるためホッキョクグマで発情が開始され始める1月から開始し、最大で7月末頃までの長期間を予定した。

2023年1月16日の状況

 同居開始時はじゃれ合い、特に異常は認められなかった。昼頃に飼育担当者が確認したところ、大放飼場内に血痕があり、ミルクの右臀部に血痕を認めたので、分離を行った。分離時、2頭は落ち着いていた。状況的にクマ同士の行動で受傷したものと思われるものの、闘争の様子は確認されなかった。
 収容時や小放飼場内では出血は無く、傷の状態確認はできなかったが、止血されていると判断し経過観察とした。
 翌17日、出血を認め受傷部に約4センチメートルの裂創が確認できたことから、18日に麻酔下で処置を行った。処置後も断続的に微量の出血を認めたが、約2週間で止血し、完治した。
 ミルクがキロルを恐れるなどの行動変化が見られず、キロルのミルクに対する行動の変化も見られないことから、受傷に伴う精神的な影響は無いと考え、再同居を計画した。

3月1日の経過

3月1日
10:03 

飼育担当者と獣医師が立ち合い、同居を開始した。

お互いのにおいを嗅ぎ、雪上でゴロゴロしながらじゃれ合う。

10:30 離れたり、じゃれたりなどを繰り返し、いつも通りの行動のため、獣医師はホッキョクグマ舎を離れた。
11:10 キロルは扉前で座り、ミルクはプール内で遊び、2頭とも落ち着いているため、飼育担当者は他の動物舎作業のため、ホッキョクグマ舎を離れたが、モニターによる観察は継続した。
11:18頃

飼育担当者がモニターにより今までにない取っ組み合いの闘争を確認し、現場に急行した。その際に闘争しているため収容する旨の無線連絡を行った。

現場到着後、収容扉を開けたが入室せず、次に清掃用の水圧が高い水による放水で分離を試みたが、分離できなかった。

11:22頃  獣医師がホッキョクグマ舎に到着し無線で緊急事態を連絡した。
11:23頃 複数の職員が到着し、マニュアルに則りホッキョクグマ舎に常備しているブイなどのおもちゃを投げ入れ、雪の投げ込み、さらに、多方向から放水やブルーシートの投げ込み、ロケット花火と爆竹の使用、餌の魚の投げ込みなどにより分離と収容を試みるができなかった。

 

その後の対応

 2頭の分離と収容を最優先とし対応したが、準備していた方法では分離も収容もできなかった。
 闘争が発生した場所はプールのすぐ近くであり、麻酔をかけた場合に2頭の落下、落水による生命の危険が想定されたため、早急な麻酔使用は行わなかった。
 対応の最中にミルクは動かなくなり死亡の可能性が高まったため、キロルの自発的な入室を餌や声掛けなどで促した。
 日頃見掛けないトラックを大放飼場観覧側に近づけてエンジンを空ぶかしして大音響を出したり、重機による雪の投入などの嫌悪刺激を与えたが入室しなかった。
 日没となり、終夜にわたる分離と収容体制を組み対応した。
 キロルの自発的な入室を促し続けるが、翌朝までに入室しない場合には麻酔を実施し分離・収容することとした。

収容までの経過

3月2日
5:40頃 放飼場壁裏側からはしごをかけて上から高圧洗浄機で放水するも効果はなかった。
はしご上からホースでキロルの鼻先に水をかけると嫌がる様子を見せたので、継続して行った。
6:20頃 キロルが自発的に入室した。

 

収容後

ミルクの解剖
3月2日 解剖実施し、頭骨損傷による死亡と検案した。
キロルの検査
3月3日 3月1日と2日に右前足に腫脹が見られたため、麻酔下での検査を実施した。
右前足の腫脹は治まっていた。右第2指球裂創の他、大きな外傷は認められなかった。

 

調査

原因究明及び再発防止の観点から問題点・課題抽出の為、職員に対し聞き取りやアンケート調査を実施した。

原因

 元々キロルは警戒心が強く、ミルクに対する恐怖心も大きかったことから、同居歴にあるように時間をかけて徐々に恐怖心を無くしていった経緯がある。2022年には長期に渡り同居を行っていたため、ミルクへの恐怖心はなくなったものと認識をしていた。しかし、ミルクの死亡後は何かにおびえるような仕草や行動が見られることがあり、ミルクに対する恐怖心が少なくはなったものの、無くなってはいなかったものと考えられる。この恐怖心と不安から怒りが生じ、攻撃性につながったものと推測される。
 キロルは人間への依存が強い傾向があり、同居から一定時間が経過し、関係者の姿が見えていると寝室に戻りたい行動がよく見られていた。以前よりミルクが遊びに飽きたキロルに遊びをしかける行動が見られたが、闘争が起きたときにはキロルが頼りとする人間が不在であったことも恐怖心が強くなり攻撃性に転じやすい状況にあったと考えられる。人間が介在している時と、していない時で行動が異なっていた可能性が考えられる。

 次に、分離できなかったことの原因については、同居方法対応マニュアルで準備していた方法(ロケット花火、爆竹、物(ブルーシートや遊具等)の投入、放水)では、興奮して組み合っている状態を止めることはできなかった。また、新しい職員に対し同居時における対応の周知・共有に認識の差があった。

 

今後の検討課題

  • 他園情報の収集方法の強化と再収集。
  • 監視体制の見直し。
  • 現実的な分離方法の再考。
  • 同居を安全に実施できるような施設改修の検討。
  • 職員への対応マニュアルの周知・徹底。
  • 同居時の対応マニュアルの改訂。

今後のホッキョクグマ飼育管理について

 ホッキョクグマにとって健康で安全を確保でき、動物福祉を取り入れ、公益社団法人日本動物園水族館協会や関係機関と連携し、法律などに準拠し、職員と来園者の安全を確保できる飼育環境の整備に努めます。
 ホッキョクグマや取り巻く環境についての諸課題について更なる情報発信とホッキョクグマの保全活動(調査、研究、普及、啓発、累代飼育など)を行い、生物多様性の保全の普及啓発に努めます。


このページに関するお問い合わせ

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