埋蔵文化財の保護
1.埋蔵文化財とは
埋蔵文化財とは「土地に埋蔵されている文化財」(文化財保護法「以下法という。」第92条第1項)と定義されており、これは上記の文化財の種類による分類ではなく、その存在する状態を意味するもので、有形文化財や有形の民俗文化財などが土地に埋蔵されていて、目で直接確認できない状態にあります。
このため、所在が知られていないか、知られていても範囲が正確につかまえられていない場合が多いのですが、当時の人々の生活の様子を直接的に伝える資料であります。
これらは、文献資料が残されていない時代にあっては、唯一の貴重な歴史的・文化的資料としての価値をもつものであり、また、文献資料が残されている時代にあっても、文献資料の内容の検証とともに新たな事実の証明など資料としての価値をもつものであります。
しかし、地中に残されている状態のものであり、工事等で一度破壊されると、元に戻すことができないため、現状のまま文化遺産として保存し、学術研究などに活用されることが望ましいものです。
以下、用語を簡単に解説します。
- 遺跡:過去の人間の生活・行動の痕跡で一定の物質的資料をもつ場所であり、文化財のひとつです。(法第2条第1項第4号)。
土地に構築された遺構と、人間が自然物を加工した製作物などの遺物で構成されます。 - 遺構:竪穴住居跡、墓壙、貝塚、チャシ跡、ストーンサークルなどの目的に応じて土地に直接形作られた物的痕跡です。
- 遺物:石器、土器、木製品、金属製品、骨角器など人間の手によって形作られ、利用された道具や装飾品などです。
- 周知の埋蔵文化財包蔵地:埋蔵文化財を包蔵する土地が、遺物の散布、地形あるいは伝承等により人々にその所在が知られ、管轄する地方公共団体の文化財保護担当部局に備える資料に登載されることにより、法的な保護の対象となることをさします(法第93条第1項)。
2.埋蔵文化財の保護
埋蔵文化財の保護は、現状のまま保存されることが最も望ましいのですが、埋蔵文化財包蔵地上での開発行為が生ずることを避けることはできません。これらの埋蔵文化財が、保存または調査等の措置が講ぜられないままに破壊されることのないよう文化財保護法の規定により、次のような措置を行い、破壊・滅失を防止しています。
- 埋蔵文化財包蔵地の周知と発見
埋蔵文化財を保護するためには、先ずその所在状況を把握することが必要です。国や地方公共団体は、埋蔵文化財包蔵地の周知に努め(法第95条)、また、土地所有者または占有者は新たに遺跡を発見した場合、文化庁長官へ届出または通知することとなっています(法第96条、第97条)。 - 文化庁長官への発掘前の届出
埋蔵文化財の調査のための発掘をしようとする者は事前に文化庁長官への届出(法第92条)が義務づけられております。また、工事事業者が周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事等のための発掘を行おうとするときにも、事前に届出や通知が必要です(法第93条、第94条)。 - 事前協議
周知の埋蔵文化財包蔵地の保護と開発事業等の調整を適切・円滑に行うため、北海道教育委員会は、文化庁長官へ届出や通知に先立って、工事等の計画段階での事前協議を行っています。- 周知の埋蔵文化財の有無
工事等で土地を掘削し、または土地の現状を変更しようとする場合は、当該工事等の区域内に周知の埋蔵文化財包蔵地が所在するか否かを確認し、周知の埋蔵文化財包蔵地が所在する場合または周知の埋蔵文化財包蔵地が同一地形面又は、付近に所在する場合には「埋蔵文化財の保護のための事前協議書」により、保護措置の取り扱いの経過を明らかにしておくことにしています。 - 埋蔵文化財包蔵地の確認調査と保護措置
当該工事計画区域について埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲確認調査を実施し、その結果に基づく文化庁長官の指示により、埋蔵文化財包蔵地の現状保存または発掘調査、工事立会、慎重工事等の保護措置を行うことになります。
- 周知の埋蔵文化財の有無
- 開発事業等に伴う発掘調査
開発事業等に伴う発掘調査は教育委員会等が行っていますが、この場合発掘の原因となった開発事業等を行う事業者に発掘費用の負担等の協力を求めています(法第99条第3項)。しかし、個人の住宅建設等で事業者に負担を求めることが困難であったり適当でない場合については文化財保護のための補助制度(法第99条第5項)があります。 - 発掘調査等によって出土した遺構や遺物
発掘調査等によって重要な遺構が発見される場合があり、遺構の現状保存について改めて協議を行うことがあります。発掘調査等によって出土した遺物については、遺失物法の適用(法第108条)を受けるので、発見者は所轄の警察署長へ発見の日から7日以内に差し出さなければなりません。警察署長はそれが文化財と認められるときは、北海道教育委員会教育長へ提出(法第101条)し、北海道教育委員会教育長は提出を受けた物件について文化財であるかどうかを鑑査(法第102条)の上、その旨を通知あるいは差し戻しを行います。なお、一般的には警察署長への差出しは、発見の届出を行うことで足り、発掘者等が発掘調査報告書の作成のために一時的に遺物を保管しようとする場合は、北海道教育委員会に埋蔵文化財保管証を提出しなければなりません。出土した遺物で文化財と認定されたもののうち、所有者が判明しないものは、都道府県に帰属します(法第105条第1項)。市町村は、地元で発見された文化財について都道府県から譲与を受けることができます(北海道出土文化財取扱要綱第14条第1項)。
3.埋蔵文化財の保存・活用
これらの出土した文化財や現状保存された遺跡は、重要文化財や史跡に指定するなど、学術研究機関の研究資料とすることや地域の博物館、資料館で展示・公開するなど、地域の歴史や文化を知るための資料として広く活用されます。
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