飼育係のお仕事

飼育係というお仕事

釧路市動物園には管理飼育展示担当という係があり、そのうち飼育作業にあたるのは13人です。
ここでは飼育係とします。
交代で休みますので、毎日7人から9人で動物たちの飼育をしています。
(2010年4月現在の話です)

それぞれが担当動物をもち、休みの人の分は出勤者で分担します。
これを「代番」と呼んでいます。その日によって代番は変わりますので、どこの動物舎でも、どんな動物でも飼育作業ができなければなりません。

しかし類人猿舎(オランウータン、チンパンジー、シロテテナガザル)だけは担当者が3人で固定されています。
頭の良い動物なので、飼育係を見分け、人によって行動を変えたり、言うことを聞かなかったりします。
人間と動物のお互いの信頼関係を築くために、また事故防止のため、常にその3人の中で飼育作業を行ないます。

またフンボルトペンギンも万全を期すために代番者を固定しています。

それではどんな仕事をしているのでしょうか?

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毎日の飼育作業 ~掃除・観察編~

朝の打ち合わせ後、飼育係は各動物舎へと向かい、動物の様子を観察するところから始まります。
まずは動物舎の鍵をあける前に、「おはよう」の掛け声から始まります。
人間相手でも動物相手でも、挨拶は肝心です。
いきなり動物舎の中に入ると相手を驚かすことになり、ケガをする可能性もあるからです。

動物舎も含め昨晩と変わったところがないか、食欲はあるか、エサの残し方や量、便の量や形に臭いなども見ます。寝室がある動物では、そちらの様子も観察します。

人間に危害を加える可能性が低い動物(マガモやウサギ、トナカイなど)は、飼育係が動物たちの中に入って掃除などを行いながら、観察です。

ライオンやヒグマなど人間に危害を加える可能性が高い場合は、動物が寝室にいるときには運動場を掃除し、動物が運動場にいるときは寝室を掃除します。

プールがある動物舎では定期的に水を抜いて掃除を行います。
機械を使えるところは、エンジン式の洗浄機を使用し、機械を使いにくいところでは、ブラシでこする、こする、こするです。
普段の清掃では、どこの動物舎でも基本的に「洗剤」は使用しませんが定期的に消毒を行う動物舎もあります。

そしてパクパクタイムがありますので「動物種のことをどれだけ勉強しているか」「飼育個体のことをどれだけ観察しているか」その結果が飼育係の説明にあらわれています。

終了後は、他の担当動物や代番の動物舎に向かい飼育作業をしながら、同時に観察も行ないます。
また代番でもパクパクタイムがある動物舎では、解説なども行います。

また共同作業などがあれば、時間をつくって協力します。
例えばニホンザルの健康チェックなどの時には飼育係が全員出勤して、作業にあたります。
他にも色々な作業がありますので、それは下に書いています。

基本的な業務である動物のうんちを取って掃除することは当たり前ですが、それよりも大事なのは「観察」をすることです。
歩き方に変わりはないか、エサを食べているか、動きはどうか、などなど・・・。
普段から観察の目を養うことで、いつもと同じかどうかがすぐわかるのです。
動物に起きた小さな変化も見逃さず、食欲がなければエサの構成を変えてみたり、ストレスがたまっているようであれば動物舎の改良を行なったり、ケガや病気の場合は、早めに獣医師の診察を受けたりと原因を探り対応策を考えます。

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飼育係の手で・・・その1 増やす

鳥の多くは、卵がなくなるともう1度産卵する習性があり、それを利用して「親鳥」と「人の手」で卵をふ化・育すうを行なうことで、生息数の少ない動物の個体数を増やすことができます。
親鳥の代わりに人の手(「ふ卵器」という機械を使います)で卵をふ化させることを「人工ふ化」、人の手で育てることを「人工育すう」といいます。

ふ卵機の写真(人工ふ化をさせるための機械「ふ卵器」です)

他の園館で人工ふ化を行なったことのある種類であれば、データや育すう方法などを教えていただきます。

過去にも行なったことがある鳥であれば、卵をふ化させるための温度や湿度などがわかっていますが他園館でも例がない場合、例えば猛禽類(肉食の鳥の仲間)のシマフクロウでは、人工ふ化を行う飼育係チームが他の猛禽類のふ化温度などを参考に卵をあたためる温度、湿度を決めます。
親鳥は卵を抱いているときに、1日に何度か卵を回転させている(転卵といいます)のでふ卵器と人間とで、1日の転卵回数、時間の間隔をなどを決めます。
そして卵の重さ、卵の中を確認し、成長具合などを確認します。

順調に卵がふ化すると、今度は人工育すうが始まります。
飼育する入れ物、部屋の温度・湿度は当然のことで、どのようなものを、どのような形・大きさで、どれだけの量をエサとして与えればよいのかを考えなければなりません。

シマフクロウのヒナの写真

シマフクロウなどの猛禽類ですと昼夜を問わずエサを食べますから、最初のころはエサを与える回数も多く、1日6回、1回目は朝5時に、最終は午後11時にエサを与えていました。
衛生面にも特に気を使わなければなりませんので、熱湯で消毒したピンセットを使ってエサを与えます。

エサを与えても、本当にこの形状で食べさせてよかったのか、食べすぎてはいないだろうか、または不足しているのではないだろうか、また翌日来た時に、ちゃんと元気にしているだろうかなど様々な不安が伴ってくる業務でもあります。
中心となる飼育担当者は、人工ふ化・育すうがある年には、健康診断で必ず胃が再検査になると言っていました。

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飼育係の手で・・・その2 生かす

動物が保護された時や繁殖しても親が育てない場合は、獣医師や飼育係の手で育てます。
特に保護された動物は、人間につかまってしまうほど体力をなくしているため、残念ながら命を落としてしまうことが多いです。

アザラシ類を例にとると、当たり前の話ですが、おとなしく口を開いてくれるわけではありません。
生後まもない状態であれば飼育係が体に乗りかかり、動かないようにして(保定といいます)
指を入れて口を開けさせてから管を入れて胃に直接、専用のミルクを流し込みます。

 

保護されたクラカケアザラシにミルクを与えている写真

保護された個体がある程度成長している(した)場合には、先ほど同様、指を入れて口を開かせ、魚を無理にでも飲み込ませます。(さし餌といいます)まず魚がエサであることを教えるところから始まり、魚の飲み込みかたも教えます。食べ方は「まる飲み」ですので、多少無理をしても魚を飲み込ませる練習をします。

 

アザラシに魚を飲み込ませている写真

こうして成長したアザラシ類は、当園で飼育を続ける場合もありますし、他園館へ旅立つこともあります。

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飼育係の手で・・・その3 直す・作る

どこの動物園・水族館でもあることですが、飼育係は大工さんのようなことも鉄工所のようなこともします。
もちろん、プロにはかないませんが簡単な工事や工作物であれば、自分たちの手で行ないます。

電気溶接中の写真

ガス溶接中の写真

左は電気溶接、右はガス溶接を行なっている時の写真です。
有資格者が作業を行なっています。
(大型特殊、建設作業機械、玉掛けなどなど有資格者がいます)
修理のほかにも、草かけや動物を分けて飼育するための部屋など鉄で作らなければならないものも、飼育係の手で作ることが多いです。

網の張替え中の写真

これはオオワシやオジロワシがいるケージの網の張替えをしているところです。
この動物舎は非公開ケージですので、お客様が目にすることはないと思いますが、ケージそのものを飼育係が総出で作ることもあります。
全員が高いところでも平気、という訳ではありませんが・・・。

ここ最近ではペンギン舎の外観、運動場も手作りで修理や飾りつけを行っています。

手直しする前のペンギン舎設置したばかりのペンギン舎

手直ししているペンギン舎塗装中のペンギン舎

完成したペンギン舎(完成したペンギン舎。ペンギンは木の板を切って塗装して貼り付けてます)

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会議

日本動物園水族館協会主催 飼育技術者研究会議

日本のほとんどの動物園・水族館が加盟している社団法人日本動物園水族館協会主催の全国飼育技術者研究会議、北海道ブロックでの春季・秋季の飼育技術者研究会議があり、当園からも参加します。
(一般の方は参加できません)

飼育技術者研究会議の様子

飼育係の出張といえば、ほとんどがこの会議への参加です。
当園の方針として、飼育技術者研究会議に参加する以上、普段の観察や積み重ねたデータを基に、会議で発表することが前提です。

発表に際して、原稿や写真などはワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトを利用しつつ、獣医師や学芸員からアドバイスなどをもらいながら完成させ、出席前に園内でリハーサルを行い、しっかり準備をして参加します。
質疑応答もありますので、それはもう、緊張しますね。

あらかじめ研究会議の要旨が各園館に配布されていますので、内容によっては飼育係から、「このことについて、聞いてきて」ということも多々あり、貴重な情報交換の場にもなります。

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学習の場として

総合学習・インターンシップ(就業体験)などの希望がある学校にはその受け入れをしており、期間に応じて、動物飼育はもちろんのこと、園内管理などの体験をしていただいています。

動物飼育では飼育係の指導の下で普段は入ることができない動物舎で飼育作業を行ないます。
動物種によって多少内容は変わりますが、実際に動物がいるところへ入って作業を行なうこともありますし、エサを作る場合も。
直接、色々な質問をしたり、話を聞くこともできます。
またインターンシップとして、飼育業務だけに関わらず、園内管理の仕事なども体験することもあります。
実際にこの仕事を経験することで、生徒さんが何かを得ていただければと思います。

飼育体験をしている時の写真

またサマースクールといい、小学校5年生以上から中学校3年生の児童・生徒さんが参加できる、1日飼育係を経験するイベントも毎年実施しています。

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記録

各動物ごとに日誌があり、毎日記入します。
餌を与えた量などはもちろん、観察の中で普段と違うことなどがあればそれを記録し、経過を追うこともできます。

また動物に餌を与える量、残った量を計測しパソコンに入力してグラフなどにして、季節によるエサを食べる量の変化や体重測定の記録などを、数字でその変化を見て、エサの栄養分析のもとで餌の量や種類を変更したり、獣医師と相談しながら健康な状態で動物を飼育できるよう、データを積み重ねています。

またカメラやビデオカメラを使用した動物の記録、編集、管理を行います。
場合によっては、暗い中でも撮影できる暗視カメラも使用します。

そして飼育動物には、すべて個体管理カードがあります。
現在釧路市動物園で飼育している動物はもちろん、過去に飼育していた動物の個体管理カードもあり、書類上でもすべての動物を管理しています。

このほかにも打ち合わせ、エサの発注・管理、除雪作業や取材対応、毎日のパクパクタイムや、行事でマイクを握って司会もやったりなどなど、実に多岐にわたっています。

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