道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明

2011年2月18日(金曜日)

社団法人 日本動物園水族館協会
旭川市旭山動物園
(ホッキョクグマ種別調整園)
札幌市円山動物園
釧路市動物園
おびひろ動物園
男鹿水族館GAO
浜松市動物園
豊橋総合動植物公園
大阪市天王寺動植物公園事務所

ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明

国内におけるホッキョクグマの飼育頭数は減少の一途をたどっています。この10年間においても、個体数は61頭から45頭にまで減少しており、飼育個体群の維持は、難局を迎えつつあると言え、より積極的な繁殖計画の推進が求められているところです。
昨年11月、ホッキョクグマの繁殖成績を向上させ、飼育個体群を維持していくために社団法人日本動物園水族館協会種保存委員会食肉類「種別ホッキョクグマ繁 殖検討委員会」が発足しました。その後、ホッキョクグマを飼育する全国の動物園水族館を対象に「ホッキョクグマの種の保存に関するアンケート調査」を実施し、全国規模での繁殖計画を検討してきたところです。
この結果、遺伝的多様性を残した飼育個体群を維持するため、繁殖可能年齢が終わりに近づきつつある20歳前後のメス個体から優先的にペア形成の可能性を探っていくこととなりました。
つきましては、ホッキョクグマ飼育園館と調整を進めてきた結果、本年は、次のとおり、個体を移動させることで合意いたしました。移動の日程は現在調整中です。今後も継続的に、全国的なペアの組み換えを積極的に実施し、ホッキョクグマの繁殖に向けた取り組みを推進してまいります。

移動対象個体と移動理由
愛称(飼育園・所有園) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期
クルミ
(釧路市動物園)
メス 14歳 釧路市動物園 男鹿水族館GAO 3~5月
 昨年円山動物園の「デナリ」(17歳)とのペアリングに成功し、繁殖が期待されたが、出産に至らず。今後は、男鹿水族館「豪太」(7歳)とのペア形成を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
ピリカ
(円山動物園飼育・おびひろ動物園所有)
メス 5歳 円山動物園 旭山動物園 2月下旬
 円山動物園で新たなペア(デナリ×キャンディ)での繁殖体制を進めるには、飼育繁殖スペースの確保が必要なため、旭山動物園に移動。旭山動物園「イワン」(10歳)とのペアリングも視野に入れた移動となる。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
キャンディ
(豊橋総合動植物公園)
メス 18歳 豊橋総合動植物公園 円山動物園 3月上旬
 豊橋総合動植物公園で飼育しているオスとのペアリングがうまくいかないため、円山動物園「デナリ」(17歳)とのペア形成を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
バフィン
(浜松市動物園)
メス 19歳 浜松市動物園 大阪市天王寺動植物公園事務所 2~3月
 昨年オス個体が死亡し、単性飼育となったため、大阪市天王寺動植物公園事務所へ移動し、「ゴーゴ」(6歳)とのペア形成を目指す。過去3度の出産歴がある。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
キロル
(おびひろ動物園飼育・円山動物園所有)
オス 2歳 おびひろ動物園 浜松市動物園 3月上旬
 浜松市動物園で飼育している「バフィン」(19歳)メスが大阪市天王寺動植物公園事務所の「ゴーゴ」(6歳)とのペア形成を目指し移動。浜松市動物園からホッキョクグマがいなくなることから、教育的展示並びに、おびひろ動物園で兄弟で飼育しているイコロ・キロルのオス同士の闘争回避のため、「キロル」を預託。
契約内容:一時的な預託契約
【参考】
 昨年1月28日、ホッキョクグマの種の保存事業の推進のため、北海道内飼育4園による共同声明がなされました。昨年2月から3月にかけて5頭のホッキョクグマを移動させ、繁殖に向けた取り組みを各園において進めてきた結果、3園で4頭のホッキョクグマに交尾が認められ、繁殖の可能性があ りましたが、以下の結果となりました。
ホッキョクグマの繁殖の記録
愛称 年齢 飼育園 ア形成個体 結果
クルミ 14歳 釧路市動物園 デナリ(17歳) 出産に至らず(2010年12月28日公表)
ルル 16歳 旭山動物園 イワン(10歳) 出産に至らず(2011年1月20日公表)
サツキ 19歳 旭山動物園 イワン(10歳) 出産に至らず(2011年1月7日公表)
ララ 16歳 円山動物園 デナリ(17歳) 出産(2010年12月25日)1頭成育中

繁殖の可能性があった4頭中3頭は出産に至らず、結果としては残念ではありますが、1頭の繁殖には成功したことや、交尾を許容しなかった個体がペアを組み 替えることにより交尾に至ったことなどを考慮すると、積極的に新たなペアの形成を試みることが、いかに繁殖の可能性を広げることができるのかを示すことと なりました。

国内のホッキョクグマの分布

ホッキョクグマの移動について
  移動前 移動後
旭川市旭山動物園 イワン(オス)
ルル(メス)
サツキ(メス)
イワン(10)(オス)
ルル(16)(メス)
サツキ(19)(メス)
ピリカ(5)(メス)
札幌市円山動物園 デナリ(オス)
ララ(メス)
ピリカ(メス)→旭山へ
デナリ(17)(オス)
ララ(16)(メス)
キャンディ(18)(メス)
おびひろ動物園 イコロ(オス)
キロル(オス)→浜松へ
イコロ(2)(オス)
釧路市動物園 クルミ(メス)→男鹿へ
ツヨシ(メス)
ツヨシ(7)(メス)
男鹿水族館GAO 豪太(オス) 豪太(7)(オス)
クルミ(14)(メス)
浜松市動物園 バフィン(メス)→大阪へ キロル(2)(オス)
豊橋総合動植物公園 チャッピー(オス)
キャンディ(メス)→円山へ
クッキー(メス)
チャッピー(17)(オス)
クッキー(17)(メス)
大阪市天王寺動植物公園事務所 ゴーゴ(オス) ゴーゴ(6)(オス)
バフィン(19)(メス)

北海道内において、ホッキョクグマを飼育している4動物園が、下記のとおり共同声明及び中間報告を発表しておりますので、ご報告いたします。

2010年6月4日(金曜日)

道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明にかかる中間報告

本年1月初旬、釧路市動物園で飼育中のクルミ(13歳、メス)とデナリ(16歳、オス)が繁殖行動に至ったことをきっかけに、道内ホッキョクグマ飼育4園 は、ホッキョクグマの繁殖推進を目的として、本年1月28日、共同声明を発表し、2月から3月にかけて5頭のホッキョクグマを移動させた後、各園において 繁殖に向けた取り組みを進めてまいりました。
その結果、円山動物園では、釧路市動物園から戻ってきたデナリとララ(15歳、メス)との交尾行動が3月下旬から確認され、さらに円山動物園から旭山動物園に移動したサツキ(18歳、メス)とイワン(9歳、オス)との交尾行動も5月上旬から確認されています。
サツキについては、円山動物園において2シーズン、デナリとのペアリングが試みられましたが、交尾には至りませんでしたので、今回、旭山動物園に移動させ て、イワンとのペアリングに成功したことは、積極的に新たなペアリングを構築させることがいかに重要であるかを示していると思われます。
ホッ キョクグマの繁殖は大変難しく、まだ、出産に至るかどうかはわかりませんが、1月にデナリとの間に交尾行動が確認された釧路市動物園のクルミと、同じく1月にイワンとの間に交尾行動が確認された旭山動物園とのルル(15歳、メス)とともに、今後の繁殖に期待がもてる結果となりました。

今後繁殖が期待される道内のホッキョクグマのメス
愛称 年齢 現在の飼育園 所有権 ア形成個体 備考
クルミ 13 釧路市動物園 釧路市動物園  デナリ(16歳) 2010.1.3交尾
ルル 15 旭山動物園 旭山動物園 イワン(9歳) 2010.1.20交尾
ララ 15 円山動物園 円山動物園 デナリ(16歳) 2010.3.27交尾
サツキ 18  旭山動物園 円山動物園 イワン(9歳) 2010.5.6交尾

※なお、ルルについては、共同声明にかかる移動とは直接の関係はありません

【参考】

道内で飼育する全ホッキョクグマ
愛称(性別)
(所有権)
履歴 備考
旭川市旭山動物園    
イワン(オス)
(旭山動物園)
2000年11月20日  ロシア・モスクワ動物園
2002年6月26日  旭山動物園へ移動 
 
ルル(メス)
(旭山動物園)
1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
1997年5月22日  東北サファリパークへ移動
2004年10月19日 旭山動物園へ移動
イワンとのペア
リングが成立
コユキ(メス)
(旭山動物園)
 1975年       野生個体
1979年10月28日 上川ベアーセンターへ移動
1987年4月25日  旭山動物園へ移動
 
☆サツキ(メス)
(円山動物園)
1991年11月14日 アメリカ・Cleveland動物園生
1992年10月31日 おびひろ動物園へ移動
2007年7月25日  円山動物園へ移動
2010年2月9日  旭山動物園へ移動 
イワンとのペア
リングが成立
おびひろ動物園    
☆イコロ・キロル
(オス・オス)
(円山動物園)
2008年12月9日  円山動物園生
2010年2月21日  おびひろ動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ
釧路市動物園    
クルミ(メス)
(釧路市動物園) 
1996年12月26日 釧路市動物園生 デナリとのペア
リングが成立
ツヨシ(メス)
(釧路市動物園)
2003年12月11日 円山動物園生
2005年1月22日  釧路市動物園へ移動
 父親:デナリ
母親:ララ
札幌市円山動物園    
☆デナリ(オス)
(円山動物園)
1993年11月9日  アメリカ・Hogel動物園生
1995年5月1日  円山動物園へ移動
2009年3月31日  釧路市動物園へ移動
2010年3月4日  円山動物園へ移動
 
 ララ(メス)
(円山動物園)
1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
1996年5月9日  円山動物園へ移動
デナリとのペア
リングが成立
☆ピリカ(メス)
(おびひろ動物園) 
2005年12月15日 円山動物園生
2007年2月2日  おびひろ動物園へ移動
2010年2月22日  円山動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ

※愛称の前に☆印のある個体は、1月に発表した共同声明にかかる移動個体

ホッキョクグマ画像

北海道内4動物園「ホッキョクグマ」の移動の先に見えるもの

動物園長 山口良雄

3月4日朝、飼育スタッフはじめ多くの関係者に見送られ、ホッキョクグマ、オスの「デナリ」が「ララ」の待つ札幌市円山動物園へ帰って行きました。当園の「クルミ」との同居期間は338日間でした。
「デナリ」の釧路市への移動の背景には、一昨年11月に当園の「ツヨシ」並びにおびひろ動物園の「ピリカ」が共にオスではなくメスであることが発表され、 2頭を提供した円山動物園、また、ホッキョクグマの国内の種別調整者を擁する旭山動物園、この道内4動物園による連携した取り組みがありました。
とても難しいと言われる動物園でのホッキョクグマの誕生、それ以上に動物園という環境の中で出産後に無事に成長するものはごくわずかです。数字で示します と、国内では1917年以降、154頭の繁殖に成功しましたが、半年以上生存したのはそのうち21頭。この中では当園が4頭、旭山動物園5頭、昨年双子の 誕生で話題となった円山動物園では5頭ですので、道内では14頭の実績となります。
海外からの導入もなかなか難しくなっている状況から、今後国 内でホッキョクグマの繁殖を進めていくには、①繁殖適齢のメスを保有し、交尾・妊娠に至らない園館は、可能なオスとの繁殖を目指し、積極的に移動を行う。 ②繁殖しない15歳前後のペアは、早急にペアを解消し、産子獲得を目指すべきである。③メスが出産後育子できない場合は、愛媛県とべ動物園の繁殖成功例 (1999年)を参考にして人工哺育に取組むべきと種別調整会議で提唱されています。
さて、「クルミ」「ツヨシ」のメス2頭を飼育する私たち釧 路市動物園は、国内の繁殖に寄与していくことをあらためて表明しました。ホッキョクグマを有する園館にはそれぞれの事情がありますが、道内4動物園は共同 して一歩を踏み出しました。今年2月に円山動物園のメスの「サツキ」がオスの「イワン」の待つ旭山動物園に、また、円山動物園の双子「イコル」と「キロ ル」は子離れする必要がありおびひろ動物園に、かわりにおびひろ動物園の「ピリカ」は、円山動物園に移動しています。
残る当園のメスの「ツヨシ」ですが、1月中の「デナリ」と「クルミ」の交尾を確認しておりますので、夏か秋の「クルミ」の産室への移動時期を見計らい、秋田県男鹿水族館への移動を予定されています。
「みんなでホッキョクグマを守り育てていく!」このことに、これからもご理解とご協力をお願いします。

ホッキョクグマ画像

動物園画像

道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明
-ホッキョクグマの種の保存事業を推進してまいります-

2010年1月28日(木)

旭川市旭山動物園
園長 坂東 元
おびひろ動物園
園長 藤川 研
釧路市動物園
園長 山口 良雄
札幌市円山動物園
園長 酒井 裕司

円山動物園では、2008年にホッキョクグマの双子(イコロとキロル)が誕生し順調に成育、さらに今年に入り、釧路市動物園では円山動物園から貸出中のオスのデナリとメスのクルミの交尾が確認され今後の繁殖が期待されるなど、動物園が取り組んでいる種の保存事業にとって、喜ばしい出来事が続いております。
このたび、今後更にホッキョクグマの繁殖を推進するために、ホッキョクグマの種別調整園である旭山動物園を含め道内4園で協議した結果、次のとおり動物園間でホッキョクグマを移動させることに合意しました。
今後は、この計画を発端として、(社)日本動物園水族館協会及び加盟園館との連携を深めながら、適齢期の個体を計画的かつ積極的に移動させることで、ホッキョクグマの繁殖を全国的に推進し、動物園の機能の一つである種の保存事業を推し進めてまいります。

移動趣旨

  1. ホッキョクグマの繁殖の可能性を最大限に生かします。
    円山動物園のララは今年の繁殖が可能なことから、釧路市動物園に貸し出中のデナリと早期にペアリングし繁殖を目指します。
    また、円山動物園のサツキを旭山動物園に移動し、イワンとの新たなペアリングを試みます。
  2. 遺伝的多様性を維持した個体増殖を目指します
    デナリとララの血統のみではなく、イワンとサツキの組み合わせのように、新たなペアリングを試み、遺伝的多様性を維持した個体の増殖を目指します。
  3. 円山動物園のララが繁殖を目指すために、子離れする必要があり、イコロとキロルをおびひろ動物園へ移動し、かわりにおびひろ動物園のピリカを円山動物園へ移動します。
移動対象個体と移動理由
愛称・(所有権) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期
サツキ メス 18歳 円山動物園 旭山動物園 2月上旬
(円山動物園) 円山動物園で2年間に渡りデナリとのペアリングを試みたが、交尾に至らず。よって、新たなオス(イワン)とのペアリングを目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約
 
動移対象個体と移動理由
愛称・(所有権) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期
イコロ・キロル オス 1歳 円山動物園 おびひろ動物園 2月中旬
(円山動物園)  交換先を探しているが、現在まで未定。親個体(デナリ・ララ)の本年中の繁殖のためには、親個体と別居させることが必要。
契約内容:一時的な預託契約
移動対象個体と移動理由
愛称・(所有権) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期
ピリカ メス 4歳 おびひろ動物園 円山動物園 2月中旬
(おびひろ動物園) イコロ・キロルをおびひろ動物園へ移動させるために、ピリカを円山動物園に移動。
契約内容:一時的な預託契約
移動対象個体と移動理由
愛称・(所有権) 性別 年齢 現在の飼育園 移動後の飼育園 予定移動時期
デナリ オス 16歳 釧路市動物園 円山動物園 2月下旬
(円山動物園)  これまで3回の繁殖に成功しているデナリとララの本年中の繁殖を目指す。
契約内容:繁殖を目的とした貸借契約に基づく返還
個体情報(イワン、クルミ、ララは移動対象外)
愛称・(所有権) 履歴 備考
サツキ
(円山動物園)
 1991年11月14日 アメリカ・Cleveland動物園生
1992年10月31日 おびひろ動物園へ来園
2007年7月25日  円山動物園へ移動 
イワンとのペアリングを目指す
イコロ・キロル
(円山動物園) 
2008年12月9日  円山動物園生  父親:デナリ
母親:ララ
ピリカ
(おびひろ動物園)
2005年12月15日 円山動物園生
2007年2月2日  おびひろ動物園へ移動
父親:デナリ
母親:ララ
デナリ
(円山動物園) 
1993年11月9日  アメリカ・Hogel動物園生
1995年5月1日  円山動物園へ移動
 ララとのペアリング再開予定
イワン
(旭山動物園)
 2000年12月8日  ロシア・Perm動物園生
2002年6月26日  旭山動物園へ移動
 サツキとのペアリングを目指す
クルミ
(釧路市動物園)
1996年12月26日 釧路市動物園生 デナリとのペアリングが成立
 ララ
(円山動物園) 
1994年11月20日 別府ラクテンチ動物園生
1996年5月9日  円山動物園へ移動
 デナリとのペアリング再開予定

北海道におけるホッキョクグマの分布図