逐条解説『釧路市中小企業基本条例』

平成21年3月24日   釧路市条例第19号
 前文 条例 釧路市は、雄大な湿原、神秘の湖、深奥な森林を抱えた日本有数の自然の中にありながら、古くから「くすり場所」として交易の拠点となり、経済的にも重要な位置にあった。
かつて幕末の探検家松浦武四郎はくすり場所を訪れたとき、「東蝦夷地第一の都会たるべし」と将来の経済的な発展を予見した。以来100年有余の間に、武四郎の言葉どおり、釧路市は幾多の先人たちが重ねた労苦を礎として、都市規模を拡大し様々な産業を根付かせ、まちに灯りをともしてきた。
釧路市は事業所のほとんどを中小企業が占めるまちであり、中小企業は、雇用の主たる受け皿であるばかりでなく、その迅速な経営判断と行動力をもって域内に財を循環させる働き手として、すぐれた素材と技術をもって優位性のあるサービスを生み出すことで域外から貨幣を運んでくる稼ぎ手として、地元の人材を育成し、様々な団体と連携して地元を育てるまちづくりの担い手として、地域情報の送り手として、地域経済活性化の中核的な役割を担っている。
一方、市民は、消費者として直接間接に中小企業の顧客となり経済循環の一翼を担っており、中小企業と互恵関係にある経済主体であるととらえることができる。
そこで、域内経済の状況に等しく影響を受ける企業と市民と行政が、地元への愛着と郷土への誇りを胸に、地域経済活性化の核である中小企業の振興のための役割を分担しつつ様々に連携し、その結果として財とサービスを生み、域内に循環させるとともに域外からの財を獲得し、高齢者が安心して暮らせ、若者が挑戦する機会に満ちたまちとなるよう、釧路市がひとつとなって、先人が築いた礎に我々と我々の子孫の努力をさらに重ねながら釧路市を幾世代にもわたって引き継ぎ、発展させるべく、基本的な理念と方向性を示すため、この条例を制定する。
解説  条例の前文としては恐ろしく長い文章になりました。条例の原案策定の際に委員の皆様がまちに対する思いを熱くぶつけるようにして議論を交わし、その中から生み出された文章です。
前文の核となるメッセージは、中小企業振興もまたまちづくりであり、愛郷心と表裏の関係にあるということです。
第1条 条例 (目的)
第1条 この条例は、本市の中小企業に関する施策について、その基本理念、基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、市、中小企業者等、大企業者及び市民の役割を明らかにすることにより、中小企業に関する施策を総合的に推進し、もって地域経済の健全な発展及び市民生活の向上を図ることを目的とする。
解説 条例の目的です。中小企業基本法の文言にそろえた書き方にしています。
第2条 条例 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項各号に定めるものでその事務所を市内に有するものをいう。
(2) 協同組合等 中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)第3条第1項各号に掲げる中小企業団体、商店街振興組合法(昭和37年法律第141号)第2条第1項に規定する商店街振興組合及び商店街振興組合連合会、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号)第3条に規定する生活衛生同業組合その他これらに類する中小企業者を構成員とする団体で、その主たる事務所を市内に有するものをいう。
(3) 中小企業者等 中小企業者及び協同組合等をいう。
(4) 大企業者 中小企業者以外の会社及び個人で事業を営むものをいう。
(5) 市民活動団体 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第1項に規定する特定非営利活動を行うことを主たる目的とした団体で、その主たる事務所を市内に有するものをいう。
(6) 域内 本市を中心として経済変動の影響を共有する経済圏の区域をいう。
(7) 域外 域内以外の区域をいう。
解説 中小企業と言っても、何をもって中小企業とするのかは法律によって定め方が異なります。本条例では、中小企業基本法に基づいた定義を準用しつつ、中小企業団体など、中小企業による団体も中小企業としています。また、釧路市内の中小企業をさしています。
特に重要なのは域内の定義であり、経済共同体のエリアを域内と定めています。従って域内の具体的な範囲は産業分野ごと、あるいは扱う商品ごとに異なってきます。少なくとも釧路市単独でなければならない、ということは考えていません。
第3条 条例  (基本理念)
第3条 中小企業の振興は、次に掲げる基本理念にのっとり推進されなければならない。
(1) 財の域内における循環と域外からの獲得は、地域経済活性化のために不可欠な車の両輪であり、それらの経済活動を進めるために中核としての役割を果たすのは中小企業であること。
(2) 中小企業者等の自主的な努力の結果である経営の革新、創業、経営基盤の強化及び様々な環境への適応は、雇用の確保をもたらすことから、地域全体で中小企業を支えることが重要であり、市、中小企業者等、大企業者及び市民は等しく地域経済活性化の役割を担うべき主体であること。
解説 この条文が本条例の心臓部であり、産消協働の考え方をまとめた記述です。(1)では1.財の域内循環、2.域外からの財の獲得が必要であること、(2)では3.地域全体の連携で中小企業を支えること、市民もまた経済活性化の主役であることを宣言しています。1~3の3つが、産消協働の考え方の基本です。
第4条  条例 (市の役割)
第4条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国や北海道、市民や市民活動団体、中小企業者等その他の様々な主体と連携し、中小企業の振興に関する自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する役割を担うものとする。
2 市は、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たっては、予算の適正な執行に留意しつつ、中小企業者等の受注機会の増大に努めるものとする。
解説 釧路市の役割について述べた条文です。第1項については中小企業基本法第6条をもとに文章を構成しており、中小企業施策に対して地方自治体がとるべき姿勢の総括的な条項となっており、いわば調整者としての釧路市がとるべき姿勢を示しています。第2項については、事業発注という、事業体としての釧路市がとるべき姿勢を示しています。すなわち、釧路市には地域経済に対してふたつの側面をもって当たらねばならず、そのひとつは様々な施策を展開する調整者としての役割、そしてもうひとつは市内最大級の事業体としての役割です。
第5条 条例 (中小企業者等の役割)
第5条 中小企業者等は、事業活動を行うに当たっては、経済的社会的環境の変化に即応してその事業の成長発展を図るため、自主的にその経営及び取引条件の向上を図るよう努めるものとする。
2 中小企業者等は、事業活動を行うに当たっては、域内における連携を重視するよう努めるものとする。
3 中小企業者等は、基本理念に基づく市の施策に協力するよう努めるものとする。
4 中小企業者等は、域内において生産され、製造され、又は加工される産品を取り扱い、及び域内で提供される商業サービスを利用するよう努めるものとする。
解説 中小企業者の役割について第1項は、中小企業基本法に則った役割であり、同時に産消協働の域外貨の獲得をも意味しています。第2項は産消協働の域内連携です。第3項はとりわけ重要な規定で、産消協働を進めるための市の施策に中小企業が協力する旨を定めています。第4項は中小企業がお互いに地域内からの仕入れに勤めるように定めています。
第6条 条例 (大企業者の役割)
第6条 大企業者は、事業活動を行うに当たっては、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚するとともに、中小企業者等との連携・協力に努めるものとする。
2 大企業者は、中小企業の振興が本市経済の発展において果たす役割の重要性を理解し、基本理念に基づく市の施策に協力するよう努めるものとする。
3 大企業者は、域内において生産され、製造され、又は加工される産品を取り扱い、及び域内で提供される商業サービスを利用するよう努めるものとする。
解説 大企業の役割にも、域内連携、域内循環を定めています。
第7条 条例 (市民の役割)
第7条 市民は、中小企業の振興が地域経済の振興並びに市民生活の維持及び向上に重要な影響をもたらすこと並びに多様な分野における地元の産品や商業サービスの地元消費が地域経済、地域環境及び地域教育などに裾野の広い波及効果を持つことを理解するよう努めるものとする。
2 市民は、消費者として、域内において生産され、製造され、又は加工される産品及び域内で提供される商業サービスを利用するよう努めるものとする。
3 市民は、中小企業を育てる視点に立って、中小企業の経営や社会貢献に関心を持つよう努めるものとする。
解説 第1項と第3項は、市民がもっと地元の会社に関心をもとうと呼びかけています。なぜならば地元の会社が栄えることが自分たちの生活を豊かにすることにつながるからです。
第2項は産消協働の理念をもつ条例ならではの条例文です。常識的に考えれば「どこで何を買おうと自由だ。だから同じような商品なら一円でも安いものを買う。そのどこが悪い」となります。これは中小企業の経営(仕入れ)にも同じことが言えます。域内循環は少なからず消費対象を限定します。ただしそれは長期的に見れば域内全体の経済力を上げるためには必要なことです。このことは、「全体として豊かになるための過渡期においては、個々が一時期不利な支出を甘受せねばならない」という、域内循環がもつジレンマのひとつです。
第8条 条例   (基本的施策)
第8条 市が行うべき中小企業に関する基本的施策は、次のとおりとする。
(1) 第5条の役割を担う中小企業者等の支援を図ること。
(2) 中小企業者等に対する融資等の支援制度を整備すること。
(3) 基本理念の啓発を図ること。
(4) その他基本理念の実現に資する措置を講ずること。
解説 釧路市の中小企業施策の基本的な方向性を定めています。
第9条 条例 (地域経済円卓会議)
第9条 市は、中小企業者等、学識経験者、消費者、市民活動団体その他の多様な構成員により、基本理念の達成に資する研究を行うため、地域経済円卓会議を設置する。
2 地域経済円卓会議において立案される実効性ある施策に対し、前項の構成員及び各経済主体は協働してその実現に向けて取り組むものとする。
解説 条例が条例だけに終わらないように、具体的な経済施策を考える仕組みが必要であり、そのための機会を円卓会議として位置づけています。策定委員会の中では、円卓会議については「地域の人も参加できるように」「わかりやすく柔軟な会議にしてほしい」などの声もあり、条例制定後、円卓会議ネットワークという形でこれを実現する仕組みづくりに取り組みました。

附則 条例 附則
(施行期日)
1 この条例は、平成21年4月1日から施行する。
(検討)
2 市長は、この条例の施行後3年を経過した場合において、中小企業をめぐる情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
解説 条例は3年ごとに見直しするという規定です。それにより継続して条例の理念達成について取り組む姿勢を確保していきます。

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